テレビがカウントダウンを初め、俺も心の中で一緒に数えた。数え終わりスマホの画面を見れば1月1日0時0分と表記されていて、年を越したと感じさせられた。
今朝は大晦日という実感がなくいつものように過ごしていたのだが、夜になりテレビを見ていると実感がうっすらと出てきて、年の最後にやりたかった事がその時になっていっぱい出てきた。結局どれ一つもやらなく、一人でいつもみたく夜更しをするかのように新年を迎えてしまった。
何故だか無性に人に会いたくなったが、今の時間に会いに行ったら迷惑なのでそんなことはしない。暖かい部屋にずっと居たため、喉が渇いたので飲み物でも買いに行こうと思い部屋を出た。
総士の部屋の近くにある自動販売機のところに行き、コーンスープを押す。出て来たコーンスープを取って部屋に戻ろうとすれば、部屋を出て来た総士と鉢合わせした。


「男主」

「よ、総士。あけおめ」

「……年が明けたのか」

「今更かよ」


総士の顔は疲れた様子で、髪の毛が少しぼさぼさだった。俺はそんな総士を見て自分が飲むはずだったコーンスープを総士に渡した。


「あげるや」

「いいのか」

「年が明けたしね」

「…意味がわからない」


俺はまた自動販売機に行き財布の小銭を漁る、しかし残っていたのは1円玉と5円玉で何も買えなかった。振り返れば総士が壁に寄りかかりながら俺のあげたコーンスープを持って俺を見ていた。


「やっぱ返して」


総士は呆れたように少し笑い、彼からコーンスープを受け取って横で同じように壁に寄りかかって缶の蓋を開けた。一口飲めば液体と一緒に粒が口になかに流れ込んできて、予想外の不味さに一瞬眉間に皺が寄った。不味い、というよりも今の自分はポカリスエットみたいな冷たくてすっきりしたものが飲みたく、それと正反対のコーンスープを飲んで美味しく感じないだけだと思う。
そんな俺を見た総士は俺の手から缶を取り、勝手に飲んだ。返された缶はさっきよりも明らかに軽くなっていて、残り具合を確かめるために横に振ればチャプチャプと軽く波打つ音が聞こえ、一口ぐらいしか残ってないなと思った。しかしそんなことよりも口を付けた所に意識が向いた。


「ヒュー、間接キッスだね? お味はどうでした?」


ニヤニヤと照れさを交えながら総士に言った。
総士は口元を親指で拭った。


「まあまあだな」


総士はそう言いながら拭った親指で俺の唇をなぞった