ユートのスマホをそっと手に取る。
ユート本人は背中越しでデッキの調整をしているため、俺にスマホを取られたと気づいていない。
画面をスライドし、パスワード画面が出てくる。数字ではなくPINだったので、少し考えエクシーズ召喚のZを取って、画面をなぞってみた。
すると画面はホームに変わりに、壁紙には自分のエースモンスターであるダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンが使われていた。チョロ過ぎだろユートくん……。
後でパスワード変えるように言ってあげよう、と思いながら、ユートのスマホの中身を漁っていく。
画像フォルダーは持ち主の趣味が色濃く出ると言われているので、俺は躊躇なく画像フォルダーを開いた。
ユートの画像フォルダーはきっちり管理されていて、スクショ、写真、の他にゲームの名前のフォルダーが沢山ある。
そのフォルダーの中に「3人」と言うフォルダーがあった。
中を見れば黒咲兄妹とユートの写真があり、20数枚あった。
写真を見るととても楽しそうで、見てるこちらまで微笑んでしまう。
戻ってまたフォルダーを漁ると、俺の名前のフォルダーがあった。
フルネームでサムネイルには体育祭の時のユートと一緒に撮った写真が表示されている。
俺とのツーショットした写真でも入っているのかとフォルダーを開けば、そこにはツーショットの写真はもちろん、俺のソロショットが何枚もあった。
ざっと見ればツーショットは数えるぐらいしかなく、俺自身の写真がフォルダー内の写真の9割を占めていた。
体育祭な写真は勿論、ご飯を食べている写真、真正面から俺が笑っている写真、更衣室で着替えている写真など、山ほどある。
そこで俺は真正面からの写真を見て身に覚えがあった。
ユートは俺と話をする時はいつもスマホを見ていた。
そんなユートを相手に俺はスマホじゃなくて俺を見ろ!!!!!と少しばかりイラついた時もあった。
しかしユートはスマホを見ながらも話は聞いてくれたので段々慣れて今ではどうでも良くなったが、今思えばその時にユートは俺の真正面の写真を撮っていたんだと思う。
俺は鳥肌が立ってきてすぐさまホーム画面に戻り画面を消した。
スマホを元の場所に戻そうとすると、ユートに「俺のスマホで何をしている」と声をかけられた。


「…な、何もしてないよ。俺のスマホの間違えただけ」


ユートと俺のスマホカバーは偶然同じ色なので、適当な事を言えば逃れられると思った。
ユートは俺の言葉を聞き、「そうか」と言った。
俺はそれを聞いて安堵し、ユートのスマホを元の場所に戻す。
俺は何も見てない。知らない。そう必死に思った。