「こんにちは!」


ハロウィンの日に孤児院に訪問してきたのは、俺たちコモンズに唯一心を許されているトップスの名前だ。
何が入ってるかわからない重そうなリュックを持って、綺麗な顔に似合わない小汚いワンピースを着ている。


「何しに来たんだ?」

「ハロウィンだからお菓子を配りに来たの。ほら、皆おいでー」


名前がそう言うと遊んでいた子供たちが一斉に名前のいるところに集まり、名前はリュックからお菓子を出して子供達に一つずつ配っていた。


「足りんのか? 他の所にも配りに行くんだろ?」

「大丈夫。この大きなリュックにはお菓子しか入ってないからね」


名前は自信げに言った。
すると名前はリュックの中に手を突っ込み、何かを探し始めた。
リュックから手を出すと、名前の手にはおもちゃの指輪があった。


「手を出して」


名前にそう言われ、右手を出した。
すると名前に反対、と言われ左手を出す。すると名前は俺の着けていたグローブを外し、俺の薬指におもちゃの指輪をはめた。


「!?」

「似合ってんじゃん。 色も赤でルビーつけてるみたいだね!」


薬指におもちゃの指輪をつけられて驚く俺に、名前は俺を見ながら笑った。
俺は少し複雑だった。左の薬指に指輪をつけられ、俺のことが好きなのかと自惚れる反面、こういうのは普通男からやるもんだと思う。


「指輪なんてもらっても嬉しくねーよ!」

「折角ユーゴのために選んであげたのに……私とお揃いだよ?」


指輪を取ろうとしたが、名前に左手を見せられ取る気が失せた。名前の左手には俺と同じ赤い指輪がついていた。


「折角同じ色揃ったからユーゴとペアでつけようって思ってたけど、いらないならちゃんと返してね」

「! ……しょうがねーな、仕方なくもらってやるよ」


俺は指輪をマジマジと見ながら言った。
正直、全然格好良くはない。プラスチックで出来ていて豪華さも何も感じられなく、物凄くしょぼい。
しかし名前は俺と一緒につけるためにわざわざくれた。
今回は男としてのメンツは丸潰れだが、将来は俺から本物の指輪を名前にあげて、今回俺が味わった感覚を名前にも教えたいと思った。