十代は無地シャツにジーパンと言う服装が物凄く似合う。それで赤いリュックを背負って、彼は待ち合わせ場所のショッピングモールの入口にいた。
そんな十代を目の当たりにして絵になり過ぎだろ、と内心ブチギレてる。
自分の服装と十代の服装を見比べるとジャンルが違いすぎて、横に並んで歩いたら不釣り合いだと思う。
今から家に帰って着替え直したい、と思ったが遅刻してまで着替える気は無かったので、そのまま十代の所に行った。


「待ちくたびれたぜ」

「時間ぴったりだわこの野郎」


十代に行こうぜと言われ、先に進む彼について行く。


「他の人誘わなかったの?」

「誘ったけど皆用事があるってさ。まあ良いじゃねえか」


元々デートなんだからさ。
そう言った十代の顔はあえて見なかった。
今日ショッピングモールに来たわけは、期間限定でいつもの半額でバイキングが出来るらしいと小耳に挟んだため。
その期間がちょうどデートする日と重なり、ついでだから行こうと提案して今に至る。
食べ物に目がない私たちにとってピッタリなデートだと思う。
エレベーターで上の階に上がっていき、店につけば混んでいた。
ギリギリ席に座れ、荷物を置いて貰った紙を見て時間を確認する。


「2時間だって」

「さっさと食おうぜ。朝飯食ってねえから腹ぺこなんだ」


と言って数分。私達は皿に食べ物を盛り付けて席に戻ってきた。
十代のトレーにはカレーにスパゲッティ、そしてゼリーがある。


「ご飯と麺とかないわ」

「お前の奴は小学校の給食みたいだな」


十代は笑いながら言った。
私のトレーにあるのは、カレーにサラダ、そしておやつのゼリーだ。てめ給食なめんなよ。
そして十代はいただきまーすと言いながら食べ始めた。
私も軽く手を合わせて言い、食べ始める。
それから私と十代は食べては取りに行くの繰り返しをし、今の私の皿には抹茶のケーキが1切れ残っている。


「あーもう満腹かも」

「俺はまだ行けるぜ」


お腹を擦りながら言う私に、何杯目かわからないカレーを食べながら十代は言った。
このバイキングはスイーツが主で、ご飯系がカレーとスパゲッティしかない。
時間ごとに中華丼になったりパスタになったりするらしいが、今日はまだ代わった様子はない。
私は最後のケーキ一切れを食べ、水を飲んで少し休む。
元は取ったかな、と思う前で十代はバクバク食べている。

今度は何食おうかな、と言いながら十代は立ちあがり、トレーを持ってまた行く。
まだ食べるのか、と思いながら席で待っていると、十代が帰ってきた。
トレーを見ればそこにはスイーツ類があり、ミルクレープとチーズケーキと先程まで無かったモンブランがあった。


「俺が行ったときに丁度モンブランが入ってきたんだ。名前、好きだろ?」


十代は自分の皿から私の皿へとモンブランを手掴みで置いてきた。
デザートは別腹、なんて言葉を聞くが今の私は別腹も満腹状態で食べる気にはなれない。
折角なので1口食べ、残りを皿ごと十代に寄せた。


「変わりに食べて…モンブラン出るなら先に言って欲しかったわ……」

「残念だったな。今度買ってやるから元気だせよ」


頬杖をついて不貞腐れる私に十代はモンブランを平らげながら言った。
そして時間いっぱいまで休憩し、帰りにショッピングモールの中を見て回る予定。
しかし、バイキングでたくさん食べた十代と私は満腹で動くのが苦しく、喫茶店に入ってまた休憩をした。
一息つき、今の満腹の状態を幸せに感じる。
こんなちょっとしたことでもそう感じる自分を嬉しく感じた。


「ニヤついてどうしたんだ?」

「なんにもない」


目の前にいる十代も少し笑ってるように思えた。