私と彼が2人っきりでいられる時間は通学の時であり、いや、周りに人がいるが唯一デートらしい事が出来るのがその時間だけだった。
朝は駅で待ち合わせをし、一緒に学校に行く。
電車の中では特に話をしたりはしなく、十代はコンビニで買ったおにぎりを食べる。
朝食は毎日食べてるらしいが物足りないため食べてるとか。
寒い日の電車の中は、足を丸出しにして歩いている女子高生にとってとても暖かい場所だった。
その暖かさで眠くなるのが冬には頻繁にある。
そんなうとうとしてる時に、十代に太ももに冷たい飲み物を置かれる。
冷たさに驚き、十代を軽く睨めば十代は毎回柔らかく微笑み返してくる。
通っている高校は違うので、十代は先に電車から降りる。
私は十代が降りた駅より3つ先の駅で降り、そこから学校行きのバスに乗って学校に行く。
学校に行けば授業を受け、友人と下らない話をし、いつもと変わらない日常だった。
私に彼氏がいる事は信頼している友人しか教えていなく、友人は私に彼氏がいることにさほど興味が無いようでその話に関しては今までまともに話したことがない。

帰りは駅に行き、電車を待っていると、横に同学年の男子らしき人が並んでくる。
私はそれをさほど気にしなく、スマホに没頭していた。
電車に乗り、座る所が空いていないのでつり革を掴む。
十代の高校の駅につき、ポケットの中にあったスマホが震える。
画面を見れば相手は十代からで「何号車?」とLINEが来ていた。
私は「8」とだけ返信をし、スマホを仕舞う。
暫くしてからスマホを弄っていると、肩を叩かれ、十代かとそちらを見たら、そこには私と同じ制服を着た男子がいた。
同じ制服を着たと言っても全く知らない男子だった。


「苗字さん、だよね」


男子にそう言われ、私は返事をする。


「ぼぼく、苗字の隣のクラスの△△と言います…! 毎日通勤時間にこの電車で苗字さんを見かけて……あの……」


口が吃る男子。
名前は良く聞かなかったため瞬時に忘れてしまった。
何用だと思えば、また肩を叩かれた。
また振り向けば今度こそは十代で、口が吃ってた知らない男子は「しし失礼します!」と言って人をかき分けて隣の車両に行ってしまった。


「誰だ? あいつ」

「名前名乗ってくれたけど忘れちゃった」


駅につき、ドアが開く。
目の前に見えるホームの階段に先程の男子が見えた。


「電車の中でナンパとか良くやるよな」

「ナンパだったのあれ」


2人でつり革を掴みながら並んで立っていた。