『笠松くん今日誕生日らしいね、おめでとう』
「おう、さんきゅ」
『何か欲しいものない?』
「お前が欲しい」
『「えっ」』
「なーんちゃって」
「っ!森山!」
後ろを見たら森山くんが笑顔で立っていた。笠松くんはそんな森山くんを見てシバくぞと言いながらホントにシバいた。
『びっくりしたよ、笠松くんが言ったのかと思った』
「いや、俺は笠松の心を代弁したんだ」
『えっ?』
「森山てめぇ何意味わかんねぇこと言ってんだ!」
「えぇ、だって名前ちゃんに欲しいもの聞かれたとき名前ちゃんが欲しいとか思わなかったのか?絶対思ったよな?」
「お、思うわけねぇだろシバくぞ!」
「痛っ!お前さっきからシバくぞとか言ってホントにシバいてるじゃないか!」
「お前が変なこと言うからだろ!」
2人は喧嘩を始めてしまった。
なんか私忘れられてるんだけど…。もう2人はほっとこうか。
「ちょっと待った名前ちゃん!」
『……』
立ち去ろうとしたら森山くんに引き止められた。
『なに?』
「笠松に何かあげるんじゃないのか?」
『あ、そうだ忘れてた。笠松くん欲しいものは?』
笠松くんの方を見ると目を逸らされた。こういうことはたまにあるから気にしないでいると森山くんが笠松くんの腕を引っ張って自分の方へ引き寄せた。
何をしているのかと見ていると森山くんは笠松くんの耳に手を当て何かをささやき始めた。何を言っているのかは私には全く分からない。
「なっ!」
しばらくして笠松くんが顔を真っ赤にしながら声を上げた。また森山くんに変なことを言われたのだろうか。
『っ…』
それをじっと見つめていると笠松くんは真っ赤な顔のまま私の前に立った。目線はこちらに向けられてはいるものの私の目は見ていない。たぶん私の頭を見ている。
『欲しいもの、決まった?』
このまま黙っていると笠松くんは何も言わないような気がしたので自分で聞いてみる。笠松くんは少しだけ肩を揺らしてゆっくりと視線を下に向けた。必然的に重なる視線。
「な、なんつーか、その…」
『……』
「お、」
『お?』
「お、お…、お前が、欲しい」
『…えっ?』
一瞬頭が真っ白になった。笠松くんが何を言っているのかわからなかったからだ。
だけど私はそのあとすぐに笠松くんの言葉を理解した。
『えっ、と…』
「……」
『はい。…でいいのかな?』
「えっ、名前ちゃんいいのか!?」
『うん…、だって私笠松くんのこと好きだし…』
「「えっ」」
二人の声が重なった。森山くんにはもうとっくにバレていると思っていたけどどうやら知らなかったみたいだ。
「予想外の展開で驚いてるよ俺は。まさか二人が両想いだったなんて…」
『っ…』
そっか、私笠松くんと両想いなんだ。笠松くんと付き合うなんて考えたことも無かったから全く実感わかないや。
『……笠松くん、』
「っ…」
『好きです』
「っ、…………俺も」
その言葉を聞いて、ようやく実感できたような気がした。
『笠松くん、これからよろしくね』
「お、う」
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お前が欲しいとかふざけましたすいません(笑)