『笠松センパイ、お疲れさまです』



そう言ってタオルとドリンクを渡すとセンパイは笑顔で受け取ってくれた。



『今日調子いいですね』

「よく分かったな」

『いつも見てるんで分かりますよ』

「っ…」



あ、照れた。


センパイは頬を染めている。



『あ、そうだセンパイ、明日の買い出し、黄瀬くんも来るって行ってるんですけど』

「は?」



笠松センパイは露骨に嫌そうな顔をした。



「なんで」

『なんか、ほしいものがあるとか』

「…おい黄瀬ぇ!」

「え、はいっス!」



黄瀬くんが笑顔で走ってきた。でもセンパイの顔を見て少し表情が曇る。



「な、なんスか?」

「明日お前も来んのか」

「えっ、ああ!ほしいものがあるんスよ!」

「よし分かった俺が買ってくる。だからお前はデートでもしてろ」

「えぇ!?いや、いいっスよ!俺自分で買うんで!」

「俺が買って来るっつってんだろ」

「…ああ、なるほど。笠松センパイ名字センパイと二人がいいんスね!」

「なっ!」

「図星っスね!」



あ、黄瀬くん殴られた。でも今のは、どちらかといえば黄瀬くんが悪いよね?それは分かってても笠松センパイの前では言っちゃいけないことだもん。笠松センパイウブなんだから。



『笠松センパイ、そのへんにしておいてあげてください。黄瀬くん一応モデルですし』

「えっ!?名字センパイ一応ってなんスか!?おれバリバリモデルっスよ!?」



黄瀬くんは半泣きだ。ちょっと可哀想かもしれない。



『ごめんね黄瀬くん』



そう言って背中をポンポンしたら嬉しそうに目を細めた。まるで犬だ。



「あ、名字センパイもういいっス。笠松センパイがめっちゃ睨んでるんで」

『えっ?…あっ、笠松センパイもやってほしいですか?』

「は?ち、ちげぇよ!」

『今ならやってあげますよ。ほら遠慮せずに』

「だ、だからいいって言ってんだろこっち来んな!」

『逃げないでくださいよー』



逃げる笠松センパイを追いかけて捕まえた。



「は、放せ…!」

『放しません!センパイをポンポンするまでは!』

「やめろ!」

『えっ……、っ!』

「…?…っ!!」



笠松センパイに、胸を触られた。もちろんわざとじゃない。抵抗するセンパイの手がたまたま私の胸に当たったのだ。しかも結構がっつり。



「い、や…、これは!」

『センパイのえっちぃ!』

「っ!ふ、不可抗力だ…!」

『でも触ったじゃないですか!』



センパイは焦っている。私はこの状況を楽しんでいる。

本気で怒るはずない。だって私たち付き合ってるし。彼氏に胸触られたぐらいでそんな、ましてや相手は笠松センパイだ。センパイのこんな慌てぶりはそうそう見れるものじゃない。



『笠松センパイ、私の胸触って小せぇとか思いましたか?』

「なっ!………そ、そんなこと」

「思わないっスよねー。だって名字センパイ結構胸大きいし」

「っ!黄瀬ぇ!」

「俺ホントのことしか言ってないっスよー!」

「デリカシーってもんがあんだろ!ぜってぇシバく!そこ動くな!」

「ひどいっスよー!名字センパイ助けて!」

『今のは黄瀬くんが悪い。笠松センパイ、黄瀬くんシバいたら許してあげます!』

「っ、黄瀬ぇ!!」



笠松センパイは黄瀬くんを追いかけていった。
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