『俊くん、わざわざうちまで来てもらっちゃってごめんね』

「いや、名前のうちに来れるのは嬉しいから」

『ありがとう。お母さんがね、俊くんのこと見たいってうるさいの』

「俺も名前のお母さん見てみたいよ」

『ふふ、それお母さんが聞いたら喜びそう。たぶんもうすぐ帰ってくると思うから』



部屋で俊くんとお母さんの話をしていると丁度お母さんが帰ってきた。お母さんは余程俊くんのことが見たいらしくドタドタと階段を駆け上がってくる。そして私の部屋まで来ると勢い良くドアを開けた。



「いらっしゃい伊月くん!」

「こんにちは、おじゃましてます」

「まあっ!名前こんなイケメンどうやって捕まえたの!」

『ちょっ、やめてよお母さんそーゆーこと言うの』

「だって想像してたよりずっと格好いいんだもん!」

「そんなことないですよ」



俊くんは平然とした顔でそう言うけど内心どう思っているかは分からない。もしかしたらお母さんをうるさい人だと思っているかもしれない。



『お母さんもういいから出てってよ』

「えー、もうちょっといいじゃない。あ、そうだ!ケーキ買ってきたのよ!伊月くん食べるでしょ!今準備してくるからちょっと待ってて!」



お母さんは風のように去っていった。



『ごめんねうるさくて。びっくりしたでしょ?』

「まあ少し驚いたけど、でも楽しいよ。面白いお母さんだな」

『楽しんでもらえたなら良かったです。あ、俊くん甘いものとか大丈夫?』

「うん」

『なら良かった。お母さん俊くんの返事聞く前に行っちゃうんだもん』

「ははっ、すごい勢いで出て行ったよな」



俊くんは笑っているけど私は恥ずかしい。お母さんがあんなに騒がしくて。



『たぶんまたいろいろ聞かれると思うけど、答えたくなかったら無視していいからね?』

「話すのは結構好きだし大丈夫だよ」

『ならいいけど』

「……」

『……』



一旦会話が途切れた。そこでここが私の家だということを思い出した。俊くんを連れてきたのは初めて。下にお母さんがいるとはいえ今は二人っきり。



「なんか静かになると緊張するな」

『うん…』

「……」

『……』

「名前…」

『っ…』


俊くんに手を掴まれて引き寄せられた。上を向くと赤い顔の俊くんと目が合う。そのまま私たちは引き寄せられるように顔を近づけた。



「準備できたわよ!」



突然ドアの開く音とともにお母さんが入ってきた。私たちは驚いて急いで離れたけどお母さんはニヤニヤしてたからたぶん見られてた。



「ごめんなさいね、邪魔しちゃって。私もう仕事行くから、それから続きどうぞ」



お母さんはそういい残し出て行った。そして部屋には赤い顔の二人が残った。
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