触ってみたい。森山くんを見ているとなぜだかそう思う。理由はよく分からない。
森山くんとは部活が一緒だから毎日顔を合わせる。前までは森山くんを見ても何とも思わなかった。
「名字?大丈夫か?」
『…あ、森山くん』
「ぼーっとしてたけど考え事か?」
『ううん、何でもないよ』
まさか森山くんに触れたいと思っていただなんて言えるはずがない。
私は一旦考えるのを止めることにした。
『黄瀬くん、今日すごい調子いいね』
「分かるっスか!?」
『うん、もちろん。だっていつも見てるんだから』
「いやー、そう言われると照れるっスねぇ」
『えっ、ちょっ!違うからね!?そーゆー意味じゃないよ!?』
「分かってるっスよー。もうセンパイ焦りすぎっスよー」
『っ、だって黄瀬くんが!』
後輩にからかわれて顔赤くするなんて、恥ずかしい。
「おい黄瀬、あんまり名字をからかうなよ」
「すいませんっス。名字センパイ面白いからつい」
「名字、黄瀬の言うことあんまり真に受けるなよ」
『うん』
森山くんが隣に来たからまた触りたいと思ってしまう。いけないと思いつつも森山くんから目が離せない。
「っ、どーした名字」
『えっ?……あっ!』
気づくと私は森山くんの手に触れていた。やってしまった、と思いつつ手を離すと森山くんに不思議そうな顔で見られた。
「俺の手がどうかしたのか?」
『えっ、いや、なんでもない!ごめん』
「最近変だぞお前。よくぼーっとしてるし」
「名字センパイ、悩みでもあるんスか?」
『えっ、悩みっていうか…』
悩みと言えば悩みだけど…。あ、でももしかしたら今ここで言ったらすっきりするのかな。みんなには確実に変な目で見られるかもしれないけど。特に森山くん。
「なんか悩んでるんなら聞くぞ?」
『っ、じゃあ…』
私は意を決して話すことにした。最近森山くんに触れたいと思っている、と。
私が話し終わると森山くんは目をパチクリさせながら私を見た。そして隣の黄瀬くんは少し嬉しそうな顔をしている。
『……?えっと…』
「森山センパイ!よかったっスね!」
『えっ…?』
「やっぱりこれってそーゆー事だよな!?」
「はいっス!」
ん?ちょっと待って。なんで二人で盛り上がってんの?私を置いてかないで。
「名字センパイ気付いてないんスか?」
『え、何が?』
「それは恋っスよ!」
『……えっ』
こい?恋…?
私が?森山くんに?
『っ!うそっ…』
「だって森山センパイに触れたいんスよね?」
『うん』
「じゃあそれは恋以外あり得ないっスよ!」
『マジですか…』
私森山くんのこと好きだったのか。全然気付かなかった。
「名字、信じられないかもしれないが俺もお前が好きだ」
『っ…!え、でも森山くんは女の子なら誰でも…』
「名字は特別だ。いつもマネの仕事頑張ってるし、見てると元気もらえるしな」
『っ…』
私森山くんに元気あげてたのか。知らなかった。
「ということで名字、俺と付き合ってくれ」
『えっ……、うん…』
「よっしゃあ!!今日から俺も彼女持ちだぁああ!!」
あれ、私ホントにこの人のこと好きなのかな。これでいいのかな。でももううんって言っちゃったしな。
まあいっか。か森山くん顔だけはいいし。
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顔だけはいいとか言いつつ実はバスケしてる森山さんも普段のふざけた森山さんも両方好きな夢主ちゃんです。