授業中、休み時間、ずーっと笠松くんを見つめていた。笠松くんはたまに私の視線に気付いてこちらを向くけれど、私と目が合うとすぐに逸らしてしまう。目を逸らした後の彼を見るといつも顔を赤くしながら険しい表情をしている。恥ずかしがっているのは確かだが、険しい表情をしているから私に見られるのを不快に思っているのかもしれない。


私、笠松くんに嫌われてるかなぁ。


そう思うが笠松くんを見るのはやめられない。だってじゃないと学校に来ている意味がないから。



『あっ…』



トイレに行って帰ってきたらちょうど教室から出ようとした笠松くんと遭遇した。



「っ…」



私が見つめると笠松くんは足を止めた。



『どこ行くの?』

「っ、え…、もり、やま…」

『あ、森山くんのところ?』

「あぁ…」

『そっか、行ってらっしゃい』

「お、う」



笠松くんは小走りで行ってしまった。そういえば彼とここまで話したのは初めてかもしれない。いつもはあいさつ程度だから。



『あっ…』



数分後、笠松くんが戻ってきた。手には英語の教科書。どうやら森山くんに教科書を借りに行っていたらしい。



『……』



無言で彼を見つめると私の視線に気付いたのかこっちを見た。きっとまた逸らされるんだろうな、そう思って見つめているとあろうことか彼はこちらにやって来た。



『えっ…』



私の前まで来ると顔を真っ赤にして私を見る。



『どうしたの…?』

「っ、…た、……ま」

『えっ…?』

「ただ、いま…」

『っ…』



ただ、いま?えっ?なんで?


疑問に思っていると笠松くんが口を開いた。



「さっき、い、行ってらっしゃいって、言っただろ…」

『あっ…』



だからわざわざただいまって言いに来てくれたの?私に?



『えっ、と…、おかえり』

「おう…」

『………』

「……」

『あっ、あの、笠松くん。私のこと嫌いじゃない?』

「えっ…、別に…」

『ホント?私いつも笠松くんのこと見てるけど、気持ち悪くない?』



そう聞くと笠松くんはそれっきり黙ってしまった。


もしかして気持ち悪いって思ってたのかな。そうだったらどうしよう。



「名字」

『えっ?』

「気持ちわりぃとか、思ったことねぇ…」

『そっか、ならよかった』



もしかしたら嘘かもしれないけど笠松くんを問いつめることはできないのでとりあえずそう返す。



「あと、…毎回、目逸らして、わりぃ…」

『えっ…、そんなこと…、だって私が勝手に見てるだけだし』

「でも俺は…」



嬉しかった。

確かに笠松くんの口はそう言った。だけど笠松くんはその言葉を言い残して行ってしまった。

さっきの言葉の意味はまた今度詳しく聞こう。もしかしたら私が笠松くんを見つめていたら彼の方から来てくれるかもしれない。

私は笠松くんを見つめるという行為をこの先も止められそうにない。



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