『由孝ー』
「ん?」
『やりたい』
「はあっ!?」
『なに驚いてんの、てかうるさい』
「名前がいきなり変なこと言うからだろ!」
『変なこと?何で変なことになるの?』
由孝は、は?と間抜けな顔をしている。
いやいやいや、は?って言いたいのはこっちなんだが。
「え、ちょっと待ってくれ。名前、さっきなんて言った?」
『えっ?どれ?』
「由孝ー、って言った後」
『ん?やりたいって言った』
「それだよ!お前それどーゆー意味か分かってるのか!?」
『は?どーゆー意味ってなにが?ゲームやりたいって意味だけど?』
「…………えっ?ゲー、ム?」
由孝は言葉を知らない子どもみたいな反応をした。
てかそれ面白いな。
『由孝なんのことだと思ったの?』
「っ!お前わざとか!俺をハメたな!!」
『は?』
「彼女にやりたいって言われたらそーゆーことしたいって意味だと思うだろ!」
『っ!!はぁっ!?何言ってんのあんた!ばっかじゃないの!?そんなこと言うわけないじゃん!』
「バカじゃねぇよ!普通思うわ!つか主語付けろよゲームって!」
『言ってないけどゲーム手に持って見せたじゃん!それ見てなかったのあんたでしょ!』
「雑誌見てたんだからしょーがないだろ!」
由孝は女性雑誌を手で持って私の前に突き出した。
てか雑誌見てたって、どうせ可愛い女の子探してたんでしょ。彼女の前でよくそんなことできるな。
『雑誌に夢中で私のこと見てないならもう雑誌の子と付き合えバカ!』
「俺は別にこの子たちと付き合いたいわけじゃない。俺の一番はお前だからな」
『っ!』
そんなこと言われたって、騙されないんだから。私が一番だったら雑誌なんて見ないでしょ。
「名前が誤解してるようだから言っておくが、俺は好きで雑誌を見てるんじゃないぞ?」
『は?』
「雑誌を見てたらお前がヤキモチを妬くと思ってな」
『っ!なにそれ!キモい!』
「はっはっはー、キモイは言いすぎだろ。というか名前、俺さっきからいろいろ我慢してるんだけど」
『は?なにをよ』
由孝はニヤニヤしながらこちらに近付いてくる。イヤな予感しかしない。
「勘違いだったけど名前にやりたいって言われて一瞬喜んだんだけど。俺のこの喜びをどうしてくれるんだ?」
『し、知らない!あんたが勝手に勘違いしたんじゃない!それ以上近付いたら殴るから』
「別にヤりたいって言ってるわけじゃない」
『あ、当たり前でしょ!!』
「でも、キスするくらいならいいだろ?」
『っ…』
由孝に手を掴まれて動けなくなった私は下を向いた。でも由孝の手によって顔を由孝の方へ向けられてしまった。
『放、して…』
「イヤだ」
『………んっ』
なんの合図もなくキスされた。逃げようとしても由孝に頭を押さえられていて逃げられない。
『…やっ、苦し…ぃ』
「悪い名前、やっぱりこれだけじゃ無理だ」
『えっ………、っ!なに服脱がそうとしてんのよ!死ねバカ!』
「いっ!」
由孝にパンチをお見舞いしてやった。由孝は笑いながら冗談だ、と言ってるけど絶対嘘だ。私が止めなかったら絶対…。
って、うわぁあ!私何考えてるんだ!
「名前今エロいこと考えてた?」
『うっさい黙れ死ねぇ!!』
あっ…。
キックしたら由孝が気絶しました。
ごめん由孝、やりすぎた。