生理のときは訳もなくイライラする。
朝お母さんの話を、うるさい!と言って無視してしまった。学校に来て朝のことを反省したものの、イライラはおさまらない。友達ともまともに話していない。どうやら私から話しかけるなオーラが出ているらしく、誰も話しかけてこない。
でもその方がいいかも。今誰かと話したら絶対酷いこと言っちゃうだろうし…。はぁ、今日あんま人と関わらないようにしよう。
気付くとお昼休みになっていた。私のイライラを生理のせいだと分かった友達が何人か、大丈夫?と話しかけてきたけど、全員に同じ言葉を返した。イライラしてて何するか分かんないからほっといて、と。
数人は、なんなのコイツ…、というような顔をしていたけど、仲良くしている子たちは分かってくれた。
『はぁ…』
お腹痛い。食欲無い。吐き気がする。帰りたい。
「名前ー!」
教室の入り口から聞き覚えのある声がした。
『コガ…』
「屋上来ないから迎えに来たぞー」
そうだった。お昼は毎日コガと一緒に食べる約束してた。生理でそんなことすっかり忘れてたよ。
教室いると騒がしくて余計イライラするし、屋上行くか。
『コガ、私のお弁当持って』
「りょうかーい」
屋上に着いたはいいものの、コガがうるさくてイライラする。
「でさー、日向が…」
『うるさい』
「え?」
『私今イライラしてるから静かにして』
「え!俺なんかした?」
『コガのせいじゃない』
私がそう言うとコガが困ったような顔で、じゃあ何?と聞いてきた。
本当のことを言ってもいいけど、絶対変な空気になるから言いたくない。てかなんか恥ずかしい。今生理だって知られたくない。
「友達とケンカした?」
『違う』
「じゃあ、先生に怒られた?」
『違う』
「じゃあ何だよー!?」
いきなりコガが立ち上がるからびっくりした。顔を見ると明らかに怒っていて、さすがにまずいと思った。
『コガ、落ち着いて』
「……」
『ちゃんと、話すから』
こうなったら本当のことを言うしかない。
コガはなぜか正座で私の前に座った。
『えっとね…、その……………生理、なの』
「………………セイリ?」
『だ、だから!月に一度の女の子の日なの!』
「っ!」
コガは真っ赤な顔で固まった。
ちょっ、え…。恥ずかしいのこっちなんですけど。もう。
『コガー、生きてる?』
「っ!いや、その、えっと…」
『ごめんね』
「え?」
『女の子の日は、訳もなくイライラするの』
「そう、なんだ…」
ちょ、いつまで動揺してんだよ。もういいよ。コガがそんなんだと調子狂うし。
「あのさ、俺、………フラれるのかと思った」
『えっ?』
「だって名前冷たかったし」
『うん、ごめん』
てかフラれるって……、そんなこと考えてたのかよ。なんかすごい罪悪感。
『あのさ、私がコガをフるなんて絶対ないから。あ、でもコガが浮気したらフるかも』
「ちょっ!俺浮気なんてしないし!てかなんで絶対なんて言い切れるんだよ」
『んー?私がコガのこと大好きだから』
「っ!」
プッ。今日のコガ照れてばっか。まあ全部私のせいだけど。
『ねぇ、コガは私のこと好き?』
「…す、好きだよ」
照れてるコガが面白くて、どれくらい?なんて聞いたら、言葉じゃ言い表せないくらい、なんて…。
不覚にもドキッとしてしまい、照れた顔を隠すようにコガに抱きついた。
「わっ!」
コガは驚きの声をあげながらもちゃんと抱きとめてくれた。
『コガあったかーい』
「なんだよ急に」
『いやー、生理のときは体冷やさない方がいいし』
「そうなの?」
『うん』
私がそう言うと、コガは私の背中に手を回した。きっと私を暖めようとしてくれてるんだ。
『コガー、もうちょっとこのままでもいい?』
「うん…」
もうちょっとなんて言ったけど、ずっとこのままがいいな。なんて思ったのは、私だけの秘密。
イライラします
(ねぇコガ、5限さぼろっか)
(え…?)
(コガと二人がいい)
(っ……俺も、名前と一緒がいい)
(じゃあ決まりだね)