これの続き





バレンタインに笠松くんにチョコを渡して、それからメールでちょくちょくやりとりしていた。私がメールを送ってからメールが返ってくる時間は早くて1時間、遅くて1日だったけど、笠松くんから返事が来るのが嬉しくて遅くてもいいと思えた。

メールの内容は今日は何をしたとか、私の好きなものとか、笠松くんの好きなとことかそんなん。笠松くんの好きなとこを言うのはもの凄く恥ずかしかったけど、私の想いが本気なんだと分かってほしかったから頑張った。

さて、私と笠松くんとのメールのやり取りが始まって今日で1ヶ月経ったわけだが、1ヶ月ということはそう、今日はホワイトデーなのだ。ホワイトデーということはつまり、笠松くんから返事をもらう日。この日を楽しみにしていたと言いたいところだが、実はそうでもない。だってフラれる可能性だってあるのだから。というかその可能性の方が高いだろう。フラれたらもうメールもできなくなるだろうし、笠松くんと話すことも難しいであろう。だからこの日が来るのは正直嫌だった。

私はどんよりとした気持ちのまま家を出て学校に向かった。

学校に着いたのはいつもより少し遅い時間だったがまだ笠松くんは来ていなかった。



「おはよー、今日だね」

『おはよー、うん』



彼女が言う今日とは笠松くんから返事をもらう日ということだ。



「そんなに自信ないの?私は大丈夫だと思うけどなぁ」

『む、無理だよ!だって私可愛くないし、それに、メールも一方的に送ってただけだし。もしかしたら笠松くんは迷惑だと思ってたかもしれないじゃん』

「自信持て!あんたは可愛いし性格もいいから絶対大丈夫!てか、あっ」



彼女が何かを発見して止まった。ん?と思って彼女の視線をたどると、教室の入り口に立っている笠松くんと目が合った。私たちは目が合った瞬間お互いすぐに目を逸らしたのだが、しばらくすると笠松くんがこちらにやってきた。気を利かせたのか友達はいなくなってしまい、残されたのは私と笠松くんの2人。



『……』

「……」



沈黙が続く。


ど、どうしよう。私から何か言った方がいいのかな。でも笠松くんとかぶったりしたら…


そう考えていると笠松くんが口を開いた。



「あの、きょ、今日の昼」

『えっ?』

「きょ、今日の昼休み、空いてるか?」



笠松くんは私の顔なんて全く見てなくて、その視線は私の机の上を行ったりきたりしている。



『えっと、今日の昼だよね?あ、空いてます』

「そ、そうか、じゃあ…」



えっ、あれ?


笠松くんはそれだけ言うと自分の席に行ってしまった。


ん?これは…、開いてるか確認されただけ?どういうことなんだろう。


しばらくして友達がまたやってきた。私が今あったことを話すと彼女は、はあ?と怒りの混じった声を上げた。そして笠松くんを睨んだ。幸い笠松くんは彼女に気付いていなかったのだが、その背中は何かを感じ取ったようで一瞬固まった。



『ちょっと、笠松くん睨むの止めてよ』



小声で彼女にそう言うと彼女はだってー、とだらしない声をあげた。



『休み時間にまたなんか言われるかもしれないしさ、たぶん大丈夫だよ、うん。だから席戻りな。もう鐘鳴るよ?』

「………分かったわよ」



彼女は腕組みしながら自分の席に戻っていった。


うーん、それにしてもホントに大丈夫なのかなぁ。このまま何もないまま今日が終わっちゃったりして…。いかんいかん、そんなこと考えたらだめだ。笠松くんが昼休み空いてるか聞いてきたんだから、きっと話があるはずだ。で、でも話聞くの怖いなぁ。


ずーっと笠松くんのことを考えていると、いつの間にか4限目に突入していた。相変わらず笠松くんからは何もない。まぁ授業中に何かあっても困るのだが。

チラッと笠松くんを見ると真面目に授業中を受けているようで、黒板の文字をノートにきちんととっていた。


って、私もちゃんとノートとらないと!………っ!


そう思って笠松くんから視線を逸らそうとするとパチリと目が合った。笠松くんはその瞬間真っ赤な顔をしたが、なにか言いたげな顔をしている。


ん?えっ、なに…。笠松くんどうしたのかな。えっ、えっ。


笠松くんの言いたいことが分からず一人悩んでいると、笠松くんが先生にバレないように携帯を取り出した。そしてその携帯を指差した。



『えっ?』



携帯…?……………あっ!もしかして!


そう思って自分の携帯を取り出すと、案の定笠松くんから一件のメールが来ていた。そしてメールを開くとそこには、″昼休み体育館で待ってる″そう書かれていた。私はなんで気付かなかったんだと嘆いたあと、返事を返した。


4限のチャイムと共に授業が終わる。

私は笠松くんが教室から出て行くのを確認してそのあとを追うように教室から出た。でも体育館に着く頃にはもう目の前に笠松くんの姿はなくて、やっぱり男の子は歩くの早いなぁ、なんて呑気に考えた。



『えっと、失礼しまーす…』



小さくそう言い体育館に入ると、その中にいた笠松くんと目が合う。



『っ!』



体育館で二人きりとか、直視できない!



「わりぃ、こんなとこまで、呼び出して」

『いや、全然平気』



相変わらず笠松くんのことは見れない。まぁそれはお互い様だと思うけど。



「それで、その、なんつーか…、この前の、へ、返事だけど…」

『う、うん』



やっぱり、フラれるのかな。私一方的にメールしてただけだしなぁ。


フラれるのを覚悟で笠松くんの言葉を待つ。



「その、俺、お前のこと、まだよくわかんねぇ」

『えっ?』

「で、でも、お前とメールすんのは、その、楽しかった、と思う」

『っ!』



分かった。フるけど一応そういう優しい言葉かけてくれるんだね。うん、笠松くんはやっぱり優しいや。私が好きになるはずだよ。



「俺、昨日ゆっくり考えたんだ。お前のこと。で、分かった。お前のことが、好きなんだって」

『うん、そうだよね。私なんか……って、えっ?』



今なんと?えっ?



『えっ!?』



私のこと好きって言った!?えっ!?嘘!だって、えっ!



『笠松くん、それ本当?』



聞いてから思った。彼は嘘なんかついてないって。だって笠松くんの顔真っ赤なんだもん。



「本気で、お前のことが好きだ。あと、その、これ…」

『えっ?』

「バレンタインの、お返しだ」



なんと!お返しまでくれるんですね!もうその返事がお返しみたいなものなのに!



『開けてもいい?』

「あぁ」



笠松くんにもらった小さな袋を開けると、そこには可愛らしいシュシュが2つ入っていた。


わあっ!これすごい私の趣味に合ってる!



「お前、よく手に付けてるだろ?だから…」

『ありがとう!これすごい気に入った!一生大切にするね!』

「は!?一生!?」

『えっ、ダメ、かな?』

「いや、その、嬉しい…」



笠松くんは照れているようで下を向いてしまった。


笠松くんがこんな反応してくれるなんて、私すごく自惚れていいんじゃないだろうか。


嬉しくてニヤニヤしていたら笠松くんに呼ばれた。はいっ!と言って顔を上げると笠松くんと目が合う。



「その、お前は、まだ…、お、俺のこと、好きか?」

『えっ…、それはもちろん、好きです!』

「っ!」



そんなに驚くことなのかなぁ、メールでもすごいアピールしてたけどなぁ。


笠松くんは顔を真っ赤にしている。



「名字」

『はい』

「俺と、付き合ってほしい」

『はい!よろこんで!って、えっ!?』



つ、つつつ、付き合う!?笠松くんと私が!?ええぇぇっ!これは夢でしょうか。



『笠松くん、ちょっと私のことシバいて』

「はぁっ!?」

『だ、だって!これ夢かもしれないし!』



そう言ったら笑われた。


あ、今日初めて笑ってくれた。笑った顔もかっこいいなぁ。



「名字、これは夢じゃねぇ。つか夢だったら困るわ」

『えっ?』

「もし夢だったら俺、すげぇ落ち込む」

『っ!』



それは、そういうことですよね。私間違ってないよね。ホントに自惚れていいんだよね。



『笠松くん!私も夢だったら落ち込む。あ、いや、一生立ち直れないかも。だってそれくらい笠松くんのこと好きだから』

「おまっ、それ言ってて恥ずかしくねぇのかよ」

『恥ずかしくないよ!だってホントのことだもん!』

「っ!」

『あ、そうだ。笠松くんお昼まだだよね?よかったら一緒に食べない?ここで』

「お、おう…」

『ホント!?じゃあ私お弁当取りに行ってくる!』



そう言って行こうとしたら腕を掴まれて、俺も行く、と言われた。もしや私のために!と思ったが笠松くんもお昼を教室に取りに行くらしい。ちょっとがっかりしたけど一緒にお昼取りに行くとかすごい恋人っぽいなぁ、なんて思ってニヤニヤした。もちろん笠松くんにバレないようにね。

そのあと私から笠松くんの手を取って二人ぎこちなく手をつなぎながら教室に向かった。




きっと夢中にさせるから
(それ、自分で作ってんのか?)
(うん!)
(そう、か…)
(ん?どうかした?)
(いや、なんでもねぇ(ほしいとか言えねぇ…))
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