※両視点です



3限の社会の時間、ふとグラウンドを見ると笠松くんのクラスが体育で持久走をしていた。一生懸命走っている笠松くんはバスケをしているときと同じくらいかっこよくて、私はしばらくの間笠松くんから目が離せずにいた。



「名字」

『はい、あっ!』



名前を呼ばれて顔を上げると目の前には怖い顔をした監督。そういえば社会は監督が担当なんだった。すっかり忘れていた。



「そんなに笠松が見たいならグラウンドに行ってもいいんだぞ」

『っ!』



監督の一言でクラスのみんなが笑い始め私はみんなに注目された。

実は私と笠松くんは付き合っていて私はバスケ部のマネージャーをしている。だから監督は私たちが付き合っていることを知っている。でもだからと言って笠松くんの名前を出さなくてもいいと思う。授業をちゃんと聞いていなかった私もいけないとは思うけど。



『すいません、ちゃんと授業聞きます』



そう言うと監督は私を一瞥し戻っていった。許してくれたのかどうかは分からない。もしかしたら今日部活のときにみんなに混ざって練習をさせられたりするかもしれない。そんなことになったら絶対吐く。あんなハードな練習私には無理だ、絶対。





しばらくして授業が終わった。さっき笠松くんを見ていたことを後悔していると同じクラスの小堀くんがやってきた。



「名字はホントに笠松のことが好きだな」

『っ!止めてよ、さっきのことは忘れたいんだから。というか監督も監督だよね。みんなの前であんなこと言わなくてもさ』

「まあいいじゃないか。お前たちが付き合ってるのはクラス全員が知ってることなんだし」

『っ!小堀くんてたまに性格悪いよね。悪堀だ』

「ははっ、なんだよそれ」

『悪堀くんは嫌いだよ。小堀くんがいい』



小堀くんはごめんと一言謝って自分の席に戻っていった。けど笑ってたし全然悪いとは思っていないだろう。悪堀くんめ、今度何か仕返しをしよう。










笠松side


放課後、部室に行くと小堀と森山がすでに来ていて森山がニヤニヤしていた。嫌な予感しかしなくて理由を聞くと森山は小堀に聞けよと言った。森山がニヤニヤしてるのは小堀のせいなのか、と思いつつ小堀を見ると小堀は微笑んでから口を開いた。



「今日名字が社会の時間よそ見してて監督に怒られたんだ」

「えっ?」



意外な内容に驚いていると小堀は俺の反応を気にせず話を続けた。



「名字ずっとグラウンド見ててな」

「は?グラウンド?」

「あぁ。社会の時間3限なんだけど笠松今日の3限何してた?」

「3限は体…、っ」



その瞬間なぜ森山がニヤニヤしていたのか分かってしまった。名字がグラウンドを見ていたとき丁度俺は体育だった。それはつまり、そーゆーことを意味している。



「名字ずっと笠松のこと見てたんだ。しかも監督がひどくてな、笠松が見たいならグラウンドに行けって言ったんだ」

「っ!」

「名字みんなの前で言われて恥ずかしくて落ち込んでたぞ。笠松、励ましてやれ」

「っ、励ますってどうすりゃいいんだよ…」

「さぁ、それは自分で考えてくれ




というかそもそも俺のせいで怒られたのに俺が励ますっておかしくないか?いいのか?つーかどうやって励ませばいいんだよ。俺がなんか言ったってその事実は消えねぇんだからどうしようもないだろ。


と思いつつ体育館にいるであろう名字のところへ行ってみた。



『あ、笠松くん』

「……」

『どうかした?』

「いや、なんつーか、その……、小堀から、お前のこと聞いて」

『えっ!もしかして私が笠松くんのこと見てて監督に怒られた話!?』

「あぁ…」

『っ!…………ご、ごめん。その場にいなかったとはいえなんか笠松くんまで辱めてしまったと言うかなんというか』

「いや、俺は別に。それよりお前は大丈夫なのかよ。小堀からお前が落ち込んでるって聞いたけど」

『落ち込んでるわけではないよ。ちょっと後悔してるだけ』



名字はただ恥ずかしかったから後悔しているということだろうが見られていたと知ってすこし嬉しかっただけにそう言われると少し傷つく。俺を見ていたことを後悔してるわけだから。



『今日ずっとみんなが私のこと見てる気がしてホントに恥ずかしかった』

「……」



名字に見られて嬉しかったって言ったらコイツはどんな反応をするんだろう。それは励ましの言葉になるのだろうか。でも名字の励ましになりそうな言葉がそれぐらいしか浮かばない。恥ずかしくてうまく言えるかは分からないが。



『あ、なんか笠松くんのせいにしてるみたいだよね、ごめんね』

「……名字」

『ん?』

「俺は………う、嬉しかった」

『えっ?』

「名字が俺を見てたって知って嬉しかったんだ」

『っ…、笠松くん…』



名字は顔を赤くし恥ずかしそうにこっちを見た。そして一歩こちらに近づき、俺の服をギュッと掴んだ。



『笠松くんが嬉しいって言ってくれて、私も嬉しい。だから笠松くんのこと、見てて良かった』

「っ…!」



名字は一瞬だけ俺に抱きつき、その後嬉しそうに笑って去っていった。




その顔は反則だから
((なんだ今の、反則だろ…))





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