昨日青峰くんに告白された。お前が好きだ、って直球に。いきなりのことに驚いてたら返事は今度でいいと言って彼は行ってしまった。残された私はその後数分間状況が理解できなかった。



『返事って言われてもなぁ…』



翌日、教室から外を眺めそう呟いた。

昨日の告白でちょっとばかし青峰くんを意識し始めた私。でも付き合うかどうかと聞かれたら微妙なところだ。青峰くんのことは嫌いじゃない。さつきちゃんの幼なじみだし、男らしいし、運動神経いいし、まあバカで変態だけど、それはこの際気にしないことにする。

それと、青峰くんは意外とモテる。かっこいいとか言われてるのを何回か聞いたことがある。さつきちゃんは意味わかんないって言ってたけど。



「名前ちゃん!」

『あ、さつきちゃんおはよう。そんなに慌ててどうしたの?』

「ちょっと来て!」

『うん?』



さつきちゃんに手を引かれ連れてこられたのは屋上。さつきちゃんは人差し指を口に合てシーッのポーズをしている。なんで静かにしなきゃいけないのかは分からないがとりあえず従う。てゆーか可愛いなさつきちゃん。そのポーズさつきちゃんくらい可愛くないとできないぞ。



「あれ」

『ん?…あっ』



さつきちゃんが指を指すからなにがあるんだと思いつつそっちを向く。そこには青峰くんがいた。彼は胡座をかいて座り、肘を膝につき頬杖をついている。



「昨日青峰くんに告白されたよね?」

『っ、うん…』



なんで知ってんのさつきちゃん。まさか青峰くんが言った?



「青峰くん、昨日から変なの。いつもは部活の時間守らないのに時間前に来るし、先輩に文句言われても何も言い返さないし、姿が見えないと思ったら隅っこでため息ついてるし」

『えっ…』

「それ見て名前ちゃんに告白したのかなって思ったの。それで青峰くんに聞いたらそうだって言うから…」

『……』

「青峰くん、後悔してるんだと思う。名前ちゃんに告白したこと」

『えっ?』



後悔?なんで?告白してから私のこと好きじゃなくなった?さつきちゃんの方がいいことに気がついた?



私の思いが分かったのかさつきちゃんは教えてくれた。青峰くんは私にフられると思っているのだと。



「フられると思ってるから、告白しなきゃよかったって思ってるんだと思う。フられたらもう、友達のままでもいられなくなるんじゃないかって、そう思ってるんだよ」



分かりづらいかもしれないけど青峰くん、名前ちゃんのことホントに大好きなんだよ。さつきちゃんは続けてそう言った。



「名前ちゃん、返事、どうするの?」

『えっ……、私は……』



青峰くんがそんなに悩んでるなんて知らなかった。そんなに私のことを好きでいてくれてるなんて知らなかった。私はずっと、友達だと思ってたから。でも青峰くんは、違ったんだ。


私はさつきちゃんに行ってくる、と言い青峰くんの元に向かった。



『青峰くん』

「っ…!」

『おはよう』

「おう…」



青峰は私と目を合わせようとしない。さっきからいろんな方向に目を向けている。



『昨日の返事、言いに来た』

「……」

『でもその前に、教えて。私のどこがいいの?私なんかよりずっと、さつきちゃんの方が可愛いし、胸大きいし、優しいのに、なんで私なの?』

「あいつのどこが優しいんだよ」

『えっ、さつきちゃん、優しいじゃん』



そう返したら青峰くんはそれはお前に対してだろ、と言った。


私に対して?うーん、そう言われてみれば、さつきちゃんは青峰くんには厳しい気がする。でもそれは青峰くんを思ってのことだと思うし…。



「お前は、誰に対しても同じだろ」

『えっ?』

「最初、みんな俺のことを怖がって避けた。でもお前は違った。他の奴と話すときと同じ顔で、俺に話しかけた」

『っ…、だから私が、好きなの?』

「あぁ…」



正直理由が意外だった。青峰くんは単純だから、顔がタイプだとか言うのかと思った。そんなこと言われるなんて思いもしなかった。ちょっと驚いたし、嬉しかった。



「お前、ダチ多いのに誰にも言わないでひとりで悩んでることあんだろ」

『っ、なんで…』

「ずっと見てたから知ってんだよ」

『っ…』

「そーゆーの見ると、放っておけおけなくなるっつーか、……俺が隣にいたら、話聞いてやれんのにって思うんだよ」



青峰くん…。今私は青峰くんに謝りたい気分だった。私は彼を勘違いしていた。好きだからとはいえ、青峰くんがそこまで他人を観察してたなんて知らなかった。他人にあまり興味がないと思ってた。

私が悩んでるときはさつきちゃんでさえ気付かないのに。青峰くんには全部、お見通しだった。



『ねぇ、青峰くん、私に告白したの後悔してるの?さつきちゃんが言ってた…、青峰くん、昨日から変だって』

「っ、お前は俺のこと、なんとも思ってねぇんだろ?」

『うん。………でもそれはさっきまでの話。今は違う』

「は…?」

『私がひとりで悩んでるのとか、気付いてくれた人なんていなかった。青峰くんが、初めて…』



顔を上げると青峰くんが目を見開いて驚いたような顔をしていた。でもそれは数秒後、変化した。

今青峰くんは、嬉しそうに笑っている。なんでそんな顔をしているのか、容易に予想できた。青峰くんは、私が告白の返事を青峰くんにとっていい方にすると思っているからだ。まあ本当にそうだから何の問題もないが。



『青峰くん』

「好きだ」

『っ…』

「俺と付き合え」

『……うん』



熱くなった顔で青峰くんを見つめるとバッと腕を掴まれた引っ張られた。そして、気付くと青峰くんの腕の中に体がすっぽりおさまっていた。



『青峰、くん…』

「なんだ」

『す、き』

「っ!」



そう呟いた瞬間青峰くんの鼓動が速くなった。青峰くんが動揺している。

今、そーゆー意味で青峰くんを動揺させることができるのは私だけかもしれない。いや、自惚れているわけじゃないがたぶんそうだろう。

そう思うともっと青峰くんを動揺させてみたいな、と思った。




好きな人には真剣です
(あ、さつきちゃんいるの忘れてた)
(はっ!?)
(青峰くーん!おめでとー!)
(うぜぇ…)





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