早いもので私が緑間くんと付き合い始めて1ヶ月がたった。付き合いだした当初周りからはどうせすぐ別れるだろうなどと言われていた。でも別れるなんて考えもせず、むしろこのまま結婚まで行くのではないかという気持ちでやってきた。緑間くんに対する不満はほとんどなく、強いていえば恋人らしいことを全くしてくれないことくらいだ。

でもそれに対しては別に何も思わない。だって相手はあの緑間くんだ。緑間くんが簡単に手をつないだりキスをしたりするような人だとは思っていない。というか絶対そういう人じゃない。それは付き合う前から思っていたことだ。私はそれも含めて緑間くんのことが好きだから全く問題ないと考えている。でもそう思ってるのは私だけみたいで周りには問題大ありだと言われる。



『高尾くん、緑間くん知らない?』

「真ちゃんならトイレ行ったけど」

『ありがとう』



トイレに向かおうとしたら高尾くんに手を掴まれた。なんだろうと思いつつ振り返ると笑顔の高尾くんと目が合う。



『なんでしょう』

「真ちゃんと進展あった?」

『え、ない』

「っ、マジかよ…」



高尾くんは頭を抱えている。なぜ高尾くんがそんなに落ち込むのか私には分からない。もしかして緑間くんのことをそんなに大切に思っているのだろうか。彼女と進展がないと分かると落ち込むくらいに。



「俺昨日言ったんだけどなぁ」

『なにを?』

「そろそろ名前ちゃんと手つないだ方がいんじゃね?って。あ、これ言ったこと真ちゃんにはナイショね」

『…高尾くん、私たちのこと心配してくれてたんだね』

「そりゃあ、まあ、真ちゃんは俺の相棒だし?」



今の高尾くんは相棒というより保護者じゃないかな。そーゆー助言てなかなかしないよね、相棒でも。相談されたとしたら話は別だけど、緑間くんに限ってそれは絶対ないと思うし。



「名前ちゃん今のままでいいの?」

『え、うん。だって愛されてるのはちゃんと感じるし』

「えっ、真ちゃんなんか愛情表現とかしてんの!?」

『うーん、愛情表現とは言わないかもしれないけど、重い荷物持ってくれたり、さりげなく歩道側歩いてくれたり?』

「マジか、真ちゃんそんなことできたのかよ…」



おい、高尾くん、緑間くんをなめすぎだろ。緑間くんは優しくて思いやりがあるからそれくらいのことはしてくれるよ。相棒ならそれくらい分かれよ。



「名前ちゃんはそれだけで幸せなわけ?」

『うん』

「ふーん、変わってんなー」



変わってる?私変わってるの?だってさ、別に恋人らしいことするだけが恋人じゃないじゃん。私はさ、緑間くんと一緒にいられるだけで充分幸せなんだよ。



「あ、真ちゃんおかえりー」

『……ん?どーしたの?緑間くん』

「いや…、なんでもない」

「真ちゃんあれっしょ?ヤキモチっしょ?俺が名前ちゃんと一緒にいたから」

「なっ!違うのだよ!」

「いやいや、そんな赤い顔で言われても説得力ねぇって」

「っ!」



緑間くんの顔がさらに赤くなった。ということはあれか、図星なのか。緑間くんはヤキモチを妬いてくれたのか。



「名前ちゃん顔」

『えっ?』

「すげぇニヤニヤしてっけど」

『あ、いや、何でもないよ』



嬉しさのあまり顔に出てたらしい。あぶないあぶない。



「真ちゃんもヤキモチとか妬くんだなぁ」

「だから俺はヤキモチなど…!」

『…?』



緑間くんが私の顔を見て止まった。一体どうしたのだろうか。



「名字、ちょっといいか」

『え、うん?』



緑間くんが教室を出ていくから私もそれに続く。後ろで高尾くんの笑い声がしたけど気にしないでおこう。

緑間の後に付いていくと人気の少ない階段の近くに着いた。緑間くんはくるりとこちらに振り返り私の顔をじっと見た。



『どうしたの?』

「……俺はさっき、ヤキモチを妬いたのだよ」

『えっ…』



意外すぎる言葉に驚く。まさか緑間くんが自分からそんなこと言うなんて。



「高尾とお前が話していて不愉快だった」

『緑間くん…』

「…俺以外の男とあまり話さないでほしいのだよ」

『うん…』



緑間くんは自分で言ったくせに顔を赤くしている。というかこれはすごいことじゃないのか。緑間くんは私のことが好きだという素振りをほとんど見せてこなかったのに、他の男と話すなって…。これはもうどう考えても私のことがちゃんと好きだってことでしょう。



『緑間くん、私もう他の男子と二人きりで話さない!約束する!』

「あぁ」



緑間くんは嬉しそうにフッと笑った。



「戻るのだよ」

『うん!………っ…!』



歩こうとしたら緑間くんに手を掴まれた。いや、掴まれたと言うより、繋がれた。

そういや昨日高尾くんが緑間くんに言ったって言ってたな。だからか。



「行くぞ」

『うん!』



緑間くんはポーカーフェイスなのに手に汗をかいていて、実は緊張してるんだなぁと思ってちょっとおかしかった。でも高尾くんに言われたからでも手を繋いでくれたのが嬉しかったから私は何も言わず緑間の横を歩いた。




気にしてるのは僕のほう
(あ、おかえ…うぇ!?真ちゃん!?)
(高尾、うるさいのだよ)
(えっ、だって真ちゃんが!手っ!!)
(黙れ)


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