最近図書室に行くのがマイブームの私。本は昔から好きだったけど借りるのではなく買っていた。でも最近気付いた。図書室で借りればもっと多くの本が読めると。

今日は何を借りようか、それを考えるのがすごく楽しい。友達に言っても誰も理解してくれなかったけど別にいいんだ。この幸せは本好きにしか分からないから。


あっ、この本面白そう。こっちもいいなぁ。


一回に借りられる本は三冊までだから毎回すごく悩む。もう少し借りられる量を増やしてくれればいいのに、と思う。自慢じゃないが私は速読というものができるから一日一冊は余裕だ。時間があれば三冊でも読み終わる。



あっ、この本この前賞とってた人の本だ。絶対読まなきゃ!



『っ!』



手を伸ばしたら誰かの手とぶつかった。人の気配なんてしなかったから私は驚いた。横を見ると見たことのない少年が立っていた。



『あ、ごめんなさい』

「いえ、こちらこそすいません」



水色の髪の彼はきれいにお辞儀をした。私はそんな彼に見とれてしまった。一目惚れとかそういうのではない。彼の動きがあまりにもきれいだったからだ。



「この本ですよね。どうぞ」

『えっ!そんな、悪いです!』

「いえ、あなたの次に借りるので大丈夫です」

『え、じゃあ私があなたの次に借ります!どうぞ!』



彼は困ったように首を傾げた。困らせるつもりはなかったのだが、一体どうしたものか。



『あの、何年生ですか?』

「一年です。あなたもそうですよね」

『えっ、同い年だったんだ。てかなんで知ってるの?』

「たまに廊下ですれ違うので」

『え、嘘!?ホントに!?私君のこと見たことないよ?』

「ボク影薄いので」



いやいや、いくら影薄くてもすれ違ってたら気付くでしょ。それともあれか、ホントにこの人は見えないくらいに影が薄いのか。



『ちなみに名前は?』

「黒子テツヤです」

『…えっ、バスケ部?』

「はい。なんで知ってるんですか?」

『友達が前話してたから。バスケ部にすごいパスする人がいるって』

「なるほど」



この人がすごいパスをするとは思えないけどな。てゆーか文化部っぽいし。ホントに動けるのかな。



「名字さん、今失礼なこと考えましたか?」

『えっ!いや全然!………うん?今名字って言った?なんで私の名前…』

「そう呼んでいる人がいたので」



なるほど。そーゆーことか。



『あぁ、そうだ、本のこと忘れてた』

「名字さんに譲りますよ」

『いやいや、黒子くん先どうぞ。私他にも読みたい本いっぱいあるし』



そう言って手にしている二冊の本を見せると黒子くんは、あっ、と口を開けた。どうしたのだろうと思っていると、その本ボク読みました、と。



『え、どっちの本?』

「両方です」

『えっ、ホント?なんか私たち趣味合いそうだね。そうだ、黒子くんおすすめの本教えてよ』

「いいですよ。じゃあ名字さんもおすすめの本教えてください」

『いいよ!』



二人でおすすめの本を紹介し合ったのだが黒子くんのおすすめはどれも面白そうで私の趣味にぴったり合っていた。また、私が黒子くんに薦めた本もどうやら黒子くんの趣味に合っていたらしく、黒子くんはパラパラと本をめくっていた。



『ねぇねぇ黒子くん、アドレス交換しよ!』

「はい」

『定期的に会って面白かった本教えあおうよ!』

「それはいいですね」

『でしょ?』



今日はすごくいい出会いをした。長い人生でもそうそうないと思う、こんな出会い。本の好みなんてみんなバラバラだし。


それから私たちは週一くらいで会って好きな本を紹介したり読んだ本について語り合ったりした。気付いたら一年があっという間に過ぎて私たちは二年生になった。私たちの関係は本仲間から親友へと変わった。だか私はそんな関係をあまりよくは思っていない。なぜなら私は黒子くんのことが好きだから。

最近告白されることが多くなり、これが黒子くんだったらなぁ、と思ったのが黒子くんを好きだと自覚した瞬間だった。そう自覚してしまってからは黒子くんに会う度にドキドキして、まともに彼の顔が見れなかった。黒子くんはきっと私の想いなんて知らないだろう。



「名字さん、聞いてますか?」

『えっ?…あっ、ごめん!聞いてなかった!』

「名字さん、最近変ですよ?」

『え、そう?』

「ボクの話全然聞いてませんし」



それは黒子くんといるだけで緊張して話に集中できないからです!
なんてことは言えるはずもなく、私は笑ってごまかした。でも黒子くんは納得がいかないという顔をしている。



「名字さん、ボクのこときらいです
か?」

『えっ!そんなことないよ!』



逆だよ逆!黒子くんのことが好きなんだよ!



「嫌いじゃないのになんでボクの目見ないんですか?」

『えっ…』



それは恥ずかしいからだけど、そんなこと口が裂けても言えないよ。黒子くんのこと困らせちゃうだろうし。



「嫌いなら嫌いってはっきり言ってください」

『き、嫌いじゃないよ!』

「じゃあなんで…」

『…っ…てよ』

「え?」

『察してよ!』



きっと私の顔は真っ赤だ。でもそのお陰で黒子くんは私が言いたいことが分かったようだ。

黒子くんはいつもの無表情ではなく、ちょっと驚いたような顔をしている。


今日で終わりかもしれない。こうやって黒子くんと会うのは。きっと黒子くんにフラれて拒絶されるんだ。



「名字さん、ボクの勘違いかもしれないんですけど、名字さんはボクのことが好きなんですか?」

『……うん』

「っ…」



フるならフってよ。別に傷つかないし。どうせフラれるって分かってたんだから。



「名字さん、どうしましょう。ボク今すごく嬉しいです」

『……えっ?』



嬉しい?…は?


目の前の黒子くんは本当に嬉しそうな顔をしている。おまけに頬を染めて。



『っ……、ちょっと待って。黒子くん、私のこと』

「好きですよ?」

『っ!』



好きですよって、そんな。じゃあ私たちは両想いだったというのか。私は一体なにを悩んでいたんだ。



「名字さんはボクのこと友達としか見てないと思ったので、ずっと黙ってたんです」

『私も全く同じこと考えてた』

「こんなことならちゃんと言えばよかったです」

『私も』



黒子くん分かりづらいし私が好きなんて素振り全く見せなかったもんなぁ。それじゃあ気付かないよ。



「ともかく名字さんに嫌われてなくてよかったです」

『ずっと嫌われてると思ってたの?』

「はい。だって名字さん全く目合わせてくれなかったじゃないですか」

『それは、黒子くんのこと好きだって意識しちゃってたから…』



あ、ダメだ。今もまともに黒子くんの顔見れない。


黒子くんの視線を感じるだけでドキドキする。



「名字さん、最近よく告白されてましたよね」

『えっ、うん』

「ボク、内心焦ってたんです。名字さんが他の人に取られちゃうって」

『とっ!?』

「はい」

『っ!………わ、私だって、告白される度にこれが黒子くんだったらな、って思ってたよ』

「っ…、今ホントに後悔してます。なんで告白しなかったんだろうって」

『ホントだよ、黒子くんに告白されたかった』



って、うわぁ、私なに恥ずかしいこと言ってんだ。



「名字さん、今改めて言います」

『えっ…』

「ボクはあなたのことが好きです。こんなボクでよかったら付き合ってくれませんか?」

『は…、はい』




指先から
(名前さん)
(えっ…)
(そう呼んでもいいですか?)
(うん)



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