バレンタインの時の>>続き
2016/10/09

登場人物
奏太→この話の主人公
律→あだ名は"りっちゃん"



夕闇に包まれた公園。
そんな中を一人佇む青年。
目線の先にはゴミ箱。

彼は片手に鞄を持っている。
どこにでもあるナイロン製のスクールバッグ。ストラップは変な顔のウサギ。
鞄を開くと学生が用いる教材などは無く、鼻をつく甘い香りが広がり、チョコレート、クッキー、ケーキなどの沢山のお菓子たちが入っている。
これは全て女子からの貰い物。
中には電話番号やメアド、愛のこもったメッセージが混じっているだろうが、そんなこと今の彼には関係なかった。

彼は彼が一番愛している人からチョコレートが貰えなかったのだ。
彼の一番近くにいて彼がこの世の中で誰よりもーー自分自身よりも、一番愛を与えていた人に。


彼は考える。
何故貰うことが出来なかったのか、
自分のどこがいけないのか、
何が足りないのか、

おれが、


「…っ!!」

むせ返るような匂いとドロドロとした感情が吐き気を掻き立てる。
軽い立ちくらみのする中、そんな思考と愛の塊をゴミ箱へ鞄ごと葬り去った。


その答えが永遠に見つからないことに薄々と気付きながら。









「やっといた!」

どこかぼーっとしていた思考が、よく聞きなれた声によって現実世界に戻される。

「…あ、りっちゃん。」

振り返ると、そこには見慣れた幼馴染みがいた。

「あ、じゃないよ!奏太んちのおばさんが心配してたぞ。」

幼馴染みの律は困り顔でため息をつく。
もうそんな時間か。辺りは真っ暗だった。

「もう、またぼーっとしてただろ。時間に気づかないとか、奏太の悪い癖だぞ!」

そんな事言って、真面目な律はきっと俺を思って迎えに来てくれたのだろう。
不思議と口角が上がるのを感じた。

「なにニヤニヤしてるんだよ!帰るぞ!!…って、あれ?」

俺の腕を掴かもうとしていた律の手は離れ、後ろを指す。
釣られてそちらを見ると、あるのはゴミ箱。

「ん?」
「そのゴミ箱に入ってる鞄…」

ゴミ箱に近付く律の後を追う。
入っているのは、どこにでもあるナイロン製のスクールバッグ。

「それがどうしたの?」
「なんか、奏太の持ってるやつに似てるなって。」
「本当だ。」

そのスクールバッグには変な顔をしたウサギのストラップが付いている。

「…あれ?このストラップ。」
「"うさぎさん"だね。」
「確か、奏太も好きじゃなかったっけ?」
「そうだけど。」
「……ほんとに奏太のじゃないよな?」

律は昔から疑り深いなぁ。
そういう所も好きなんだけどね。

「さぁ?そんなのどうでもいいじゃん。早く帰ろ。」
「どうでもいいって、お前なぁ…」

目の前の幼馴染みは再び困り顔を浮かべ、鞄を取ろうとゴミ箱に手を伸ばした。
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