二人きりで*


四十万打企画
リクエスト:遥凜太郎、えっちなやつ

***

りんちゃんと、二人きりで旅行にきた。
りんちゃんの短大卒業旅行を兼ねて。俺も高校を卒業して二年、長い休みもとらず仕事に没頭していたからじいちゃんが休みをくれた。じゃあ二人でゆっくりどこかに行こうと少し遠い場所にきた。
綺麗な海の見える、少し高級なホテルをとってお昼は海辺のお洒落なカフェでランチをした。夜はホテルのディナー。そのあとホテル内のバーでお酒を飲んだ。二十歳になって飲めるようになったお酒は、俺もりんも対して強くはなく、難しいカタカナの名前のカクテルを一杯飲んで満足してしまった。

「今度は夏に来よう」

「海の時期?」

「うん」

「うん、来よう。その時は最上階泊まろっか」

「あはは、そんな贅沢はしなくていいよ。どこだって、遥と居られれば楽しいよ、僕は」

にこりと笑ったりんの顔はほんのり赤く、テーブルの木目を指先でなぞりながら「部屋、戻る?」と問うてきた。まだ時間は遅くないけれど、今朝は早起きしてたくさん歩いて喋って、慣れないお酒も飲んだから眠いのかもしれない。ふわりと頭を傾けながら立ち上がったりんの手をとり部屋に戻ると、りんちゃんはそのまま壁一面の窓ガラスの前に座り込んだ。

「夜の海だね」

海を囲むように夜景が煌めく景色は息をのむほど綺麗で、ザーザーと聞こえる波の音は昼間とは違って穏やかで静かだ。仄暗い中、その隣に腰を下ろすとりんは俺を見て微笑んだ。

「明日、早起きして散歩したいね」

「気持ち良さそう」

「ね」

なんて綺麗なんだろう。
柔らかい髪を撫でて、やんわりと後頭部を押さえて顔を寄せるとりんちゃんはえっちな目をして俺を見た。

「もう寝ちゃう?」

「勿体なくて寝れないよ」

「だね、」

何度も回数を重ねたキスはそれでもドキドキする。やわらやわと唇を押しあて、頬を撫でて、鼻先で笑い合って、りんの腕が首に回された。

「ベッド上がろ?」

「……ん」

「持ち上げるよー」

「はは、重いよ」

「んー…前よりは重くなったかも」

「子供じゃないんだから、そんなに変わらないよ。あ、もしかして太った?とか?」

「ううん、そうじゃないけど…なんだろう、俺りんちゃんがたくさんご飯食べるの見ると安心するし、なんでも美味しく感じるし、だから…なんだろうね、幸せ太りってやつかな」

俺もお酒が回っている気がする。
それでもりんは楽しそうに笑ってベッドに移動した。笑ってキスをして、ゆっくり、ゆっくり、服を剥ぐ。太った、とは少し違う。男っぽい体つきになったのだ。
腕や、肩、背中、少し筋肉質になって、“華奢”とは違うものになった。でも俺には関係なくて。首筋から耳まで舌を這わせ、胸を指先で触れば気持ち良さそうに体を固くすることも、前を擦って目を潤ませることも変わらないのだ。恥ずかしそうに手で目元を押さえ、「遥」と名前を呼ぶ声だって変わらない。

「、ん…」

「かわいい」

「っ、かわい…くない…」

「可愛いよ。めちゃくちゃ可愛い。りんちゃん」

裸になったりんちゃんはやっぱり綺麗で、ほんのり潮の香りがする髪を撫でる。エッチするのが目的だった訳じゃないけれど、そうなってもいいように準備はしてきた。潤滑剤とコンドームをベッドの下に広げていた鞄から引っ張り出すと、りんちゃんは赤くなった顔を隠すように枕に顔を埋めてしまった。

「りん、」

「ん、ふぅ…」

「触って良い?」

「っ、や…聞かな…」

「ごめんなさい。触るね」

胸がいたい。ドキドキしすぎて。
お尻を掴んで向けられたそのすぼまりにローションを伸ばしてゆっくり指を挿入すると、少し苦しそうな、けれど甘い声が漏らされた。じわりじわりと柔らかくなっていくそこで、もう何度繋がったんだろう。一つ一つりんちゃんの表情も声も覚えているのに、いつまでたっても恥ずかしい。
お尻にキスすれば「やめて」と情けなく言うし、内腿に噛みつけば俺の髪を指ですきながら「いたい」と言って笑う。

「は、るか…」

「ん」

枕に吸い込まれそうな声が室内に響く。俺はそっとその背中に覆い被さって、りんちゃんのものを扱いた。肩に唇を押し付けながら、固くなってびしょびしょに濡れていくのを感じるだけで自分も達しそうになる。

「あっ、ぁ…ん、だ、め…はるか、」

「イく?」

「ん、んん、はるか、」

「うん、」

「お尻、あたって…る、はるか、の」

「ご、ごめん、もう少し、我慢…するから」

「あっ、イ……ぅ、んん…」

「はぁ…りんちゃん…」

「ん、」

「いれるね」

ほとんど触っていないのにガチガチになっている自分のものにコンドームを被せて、りんちゃんの精液で濡れた指で挿入部分をもう一度解す。少し力の抜けたことを確認してなるべくゆっくり挿入した。

「っあ…ぅぅ…」

「ごめっ、痛い?」

「ちが…あぁっ…」

「っり、まっ待って待って、そんなに締めれたら俺もイっちゃうから…ね、力抜いて…」

「ふ、ぅ…」

シーツを握る手をそのまま包み込んで指を絡ませると、顔を動かしたりんちゃんが濡れた目で俺を見た。可愛い。ほんとに可愛い。

「はるっ、なか…」

「ごめん、おっきくなった…動いて平気?」

「、ん、んん…」

「はぁ…りん、りんちゃん」

ひやりとしていたはずの部屋がむわりと暑くなったように感じる。自分の息がりんの肩口にこもってそう感じるだけなのか、体温が上がったからなのか、どっちでもいいけれどりんちゃんも同じなんだろう。首筋からの匂いが強くなった。鼻を押し付けて大好きなその匂いを奥まで吸い込んで、吐きながら「気持ちいい?」と問うとシーツの擦れる音が返事をした。

「んっ…ぁ…はぁ、」

「うぅ、りんちゃんごめん、俺もう…あんまり持たない、かも…」

りんは何度も頷いて何度も俺の名前を呼んだ。明日、帰ってしまえばまた会えない日が続く。寂しいけれど会える日を楽しみに仕事も頑張れる。りんちゃんも仕事が始まればもっと会うのは難しくなるだろうけれど、今のこの気を失いそうなほどの幸福感で一生頑張れそうなくらいには幸せだ。

「ん、うん、」

目が覚めたとき愛しい人が腕の中にいる明日の朝が待ち遠しいのと、この夜がまだ続いてほしいのと、両方の気持ちで背中にいくつも赤い痕を残した。二人きりの夜が徐々に深くなって、そして明るんでいくのを目の片隅で感じながら、抱き合ってキスをした。


静かな夜の二人









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