「うわ、蓮くん先生ごめん!」
「うん?」
「昨日ぶつかったとこ、赤くなってる」
「え?」
「ここ、襟足のとこ」
「あ、あ〜…全然、平気だよ。痛くないし」
もう少し髪が長ければ隠れていただろうか。ごめんなさいと本当に申し訳なさそうに繰り返す生徒に、むしろこっちの方が悪いことをした気がしてきた。そもそも、赤くなっているのも昨日、虎が…
「蓮くん?やっぱり怒ってる?」
「、ううん、ごめん、大丈夫だよ。気にしないで」
“こんなセックスしといて、普通に教壇立つってエロいだろ”
確かに、そうだ。
僕らはもう大人で、自分の行動に責任も持っている。けれど、昨夜虎に触れた手で生徒に触るのが躊躇われる。それを気にして虎に触れられない方が辛い。ただ、“教師”としてここに立ってしまうとダメだ。途端に恥ずかしくなる。まだうっすらと胸に残る痕は誰にも見えないのに、胸を隠したくなるような。
「ね、」
「うう…」
自分が高校生の頃まっさらだったとは思わないし、そのとき自分みたいな先生が居たらなんて考えたこともなかった。それでも、今の僕から見た生徒達は無垢で綺麗だから、バレてはいけないなんてことを、こっそり思った。
「蓮くん先生今日一段とツヤツヤだよね」
「分かる。つやっとさらっとしてる」
「アイドルゥ…」
「はい、じゃあ座って〜出席とります」
ネクタイで締めたシャツの下に秘密を忍ばせて。