やさしいおおかみ.
好きすぎて、どうしよう。
何だって彼女は。春にはパンツスタイルだったにも関わらず冬になってそんな短いスカートに替えたりなんかしたのか。
「菜美のバカ!絶対痴漢に遭うよ!スカートの中パシャリだよ!」
「大袈裟だなぁ。そんな事考えてるの香穂だけだってば」
無防備な恋人はまるで危険度を解ってくれない。
世の中には大きな耳と口を持った優しくない狼がうようよしているに違いないのに。
「っ、香、穂」
「ほらほら〜、こういう事されちゃうよ。電車の中で」
腿の内側をさらりと撫でてそのまま、くすぐるように温もりに手を這わせる。腕を押されて止めるよう訴えて来る顔すら可愛くて、悪戯心が増した。
「や、だ、ってば、」
下着の近くまで指を進めて、つ、と敏感な先に触れる。流石にこれ以上はやり過ぎかなと手を止めたら、ちょっと泣き出しそうにふるふると首を振った。
「ごめん、ね?」
だって、心配なんだよ。そうやって、可愛いから。
何時か狼にやられてしまいはしないかと。
「もう、バ香穂、」
そんな風に毒吐きながらも、軽く優しく唇が触れる。
このまま、ふたりしか居ない空間にエスケープしてしまおうか。
そうしたら、世界に狼は、ひとりだけ。
その空間だけの狼は、彼女を何処までもやさしく突き堕としてあげる。
日野は気付かれないようにふふと笑って、天羽の手を取った。
世界でいちばん、君が好き。
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