恋を、しました。






取材用のノートを開いて、持っているシャープペンの頭を顎でカチカチと押しながら、何でもない事のように彼女は言うのだ。
何時も繰り返す質問と変わらない言葉みたいで、少しばかり残酷な。


「ね、直って好きな人とか居ないの?」


話題が切れた頃合を見て、やけに興味津津に瞳を輝かせながら。
本当はこの隙を狙って言葉を切ったに過ぎないのだけど、彼女は気付いていない。

恋愛感情だとか、愛だとか、正直面倒だと思っていた。恋心だと言い訳付けて他人の重荷になる何て、バカバカしい。
冷めてる、って言われても気にならなかったし、そこまで熱を上げられる相手も居なかった。

それが、今じゃ、この有様だ。
どうにも人間ってものは他人を要因にして変わって仕舞うらしい。
餌に掛かった獲物をどうやって手込めにしようか狡賢く張巡らせるくらいには。


「あ、記事にするとかじゃないよ。たださ、モテそうなのになって気になってただけで」
「私、居るよ、好きなヤツ」


ひどく驚いて、開かれた青と、視線が絡む。


「元気過ぎて回り迄振り回す困った子で、今私の目の前に居るひと」


にやり、笑ったら、一気に表情が変わる。
あんまり珍しいので少し揶揄ってやったら、ぺしんとノートで叩かれた。
じわり、広がる甘い痛み。

恋愛事に疎いと他人は言うけれど、『本当』を知っているのは彼女だけで良い。












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超マイナーな小林×天羽でした(*^−')ノ




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