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IHも終わって一息。とは行かないのが俺たちの性かもしれない。

IH予選敗退。
俺たちの部活では3年生は春高まで残ることになった。
俺は春高に向けて毎日厳しい練習に明け暮れている。

「そういや赤葦」

「なんです、木兎さん?」

夏休みも終盤、部活を終えて着替えていたら木兎さんに話しかけられた。
またどうせくだらないことだろうと思って俺は気持ち半分に聞いていた。

「最近ミオが元気ないんだよな〜」

「え、ミオが?」

思わず即答してしまった。
木兎さんはそんな俺の動揺には気づかず話を続ける。

「うーん、なんか俺にもはなしてくれないんだよな。ため息ばっかで元気もないような……」

「夏風邪ですか!?」

俺はくい気味に問う。木兎さんはなおも俺の動揺など気づく様子もなくそうだ! と何かをひらめいたように手をたたく。

「なあ赤葦。お前確かクラスでも仲いいんだよな? 今日俺んち来い。んで、ミオの悩み聞いてやってくれないか?」

「え……?」

俺はポカンと固まった。
いや、普通に木兎さんに話さなかったものを俺に話すわけがない。
いやそもそも、俺がミオの家に……?
そんなの、動揺するに決まってる。

「木兎さん俺は……」

「よし! じゃあ行くぞ!」

断ろうにも木兎さんは俺の意見なんか無視して足取り軽く家路を歩いていた。
ほんと、この人がミオの兄だなんて信じられない。






「お、お邪魔します……」

初めて訪れたわけでもない木兎さんの家に俺はなんだか緊張した。
ミオの家でもあるという事実が俺を緊張させたのだ。

「じゃ、ミオ呼んでくるから」

そういって木兎さんは2階へと消えていく。
俺はそわそわしながらリビングを見渡した。

「あ……」

今までは気づかなかったけど、部屋のいたるところに木兎さんの写真があった。
それに、ミオの写真も。
小さいころからかわいかったんだな……なんて見てる場合じゃない。
俺は深呼吸をした。

「はいるぞー」

そういって木兎さんが部屋ドアを開け、木兎さんに隠れるようにしてミオも入ってきた。

どき、と心臓がはねた。

私服姿のミオは思った以上に破壊力があった。
かわいい、あいらしい。

「あ、赤葦くん、いらっしゃい。お兄ちゃんのわがままにつき合わせてごめんね?」

ミオは力なく笑った。

「たく、じゃ、俺は部屋行くから」

「え、木兎さん? 一緒に話し聞かないんですか?」

俺はあわてて立ち上がる。

「ん? あー、なんかミオが俺には聞かれたくないんだって」

あっけらかんと言う木兎さんはそのまま俺とミオをリビングに残して出て行った。

「あー、ミオ。その」

「うん。私が悩んでるってお兄ちゃんから聞いたんでしょ?」

ミオは俺の向かいに座るとまた力なく笑う。

「その……俺に力になれること、ある……かな?」

なぜだか緊張してしまって体が芯から冷える。
真夏のクーラーのせいではない冷えだ。

「んー。私、……赤葦くんは、恋とか、したことある?」

いきなりのミオの問いに俺は首をかしげながらも答える。

「そりゃまあ、恋はしたことあるけど……」

したことある、というより現在進行形でしている。
そう、目の前の君に。

「そ、そっかぁ! うん、まあ、私の悩みって、そういう話なんだ、よね……」

ミオはあはは、と頭をかく。
恋? ミオが? だれを?

「赤葦くん……?」

「そう、なんだ。そっか、そう、」

俺はどうしていいかわからなくなって、ミオの声なんか耳に入らなくなっていた。
確かに俺はミオが好きだけど、だけどミオには幸せになってほしい。
だからミオの恋を応援したいし邪魔したくない。
でも、でも。

「俺、好きだ。ミオが好きだった」

気づいたら俺の口から言葉になって出たそれに俺はハッとして口を噤む。
ミオをみれば驚き目を見開いていた。
ああ、そうだよな。俺はただの友達で。

「ごめん、ミオ。泣かないで……」

「……な、んで、謝るの?」

「え?」

ミオは涙でぬれた顔で、きれいに笑った。
その笑顔は、今までの中で一番きれいで、愛おしかった。

「私、赤葦くんが好き、なんだよ。お兄ちゃんの試合、応援に行って。それで、あなたのこと知って。ずっと、ずっと好きだった」

あまりに急な話で俺は頭が追いつかなくて、でもこの日、たしかに俺とミオは心を通わせた。
ただ、この内気な彼女と本当に打ち解けるには、まだまだ時間がかかるんだけど。





151022


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