クーフィア達は軽く雑談を交わし、いざ店を出ることになると、ちょっと待っててとパトリシアに呼び止められた。また奥へと消え、戻ってきたパトリシアの手には可愛くラッピングされた袋。
「これ、私からのお礼ね」
「何これ?」
「私が作ったクッキーだよ」
「えー…パトリシアが作ったクッキーって不味そう」
「失礼ね、クッキーだけはおばあちゃんに負けない自身だってあるくらい得意なんだから!」

胸を張るパトリシアに、しのごの言わずに受け取りなさい!とクーフィアはクッキーを押し付けられる。―――いまクッキーが割れた感触あったんだけど。
クーフィアの怪訝な顔をどう受け取ったのか、パトリシアは目線の高さを合わせ、クーフィアのあいている手をギュッと握った。…近い。
彼女と目を合わせると、その澄んだ海のような瞳に、体の中のもの全てが吸い込まれるてしまうような気がした。

「また来てクッキーの感想、教えてね」
にこり、と笑って彼女の手が離れ、ふっとクーフィアの肩の強ばりがとけた。動悸も少し早い気がする。
――今、なにが起こったの?こいつ、凄腕の殺し屋か何か?
疑いの目を向けるも、パトリシアは普通のその辺にいる人と変わらない…気がする。そもそもパトリシアがパンピーじゃなかったら、既にエルエルフが行動を起こしているはず。

ただの勘違いだと思って、手を振るパトリシアに背を向けて基地へと帰った。


***


「あれ、その袋…"Rotkappchen"のだろ?なんでお前らが…」
戻ってイキナリ袋に反応したのはハーノインだった。さすが休みの度にデートに出掛けているだけに、この手の店はよく知っているのだろうか。
「私たちが店主の孫娘に恩を売ったら、タダでケーキと紅茶を振舞ってくれたんだ」
「へぇ、あそこのケーキって美味しいよな」
「なんでハーノがイン知ってんの?」
「あそこに女の子を連れていくと喜んでくれるからねぇ」
「ハーノ、またお前はそうやって…」
「なんだよ、イクス。俺がどこで何してたって関係ないだろー」

始まった痴話喧嘩を無視し、クーフィアはクッキーの袋を覗く。可愛くデコレーションされたものから、素朴なものまで多種多様だ。美味しそう…、そう思って手を伸ばしたところで、アードライに見付かった。
「クーフィア!食前に食べたら、また野菜を食べないだろう!」
「何をしてもクーフィアは野菜を食べようとしないがな」
「野菜にはそれぞれ含まれている成分が…」
「イクス、クーフィア相手に理詰めで説得させるのは無理があるぞ。俺もわかんねーけど」
「もう何なのさ!?急に皆して〜」
それから鬼ごっこが始まり、クリムに怒られるのは数分後の話である。



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