「このバカ者が!!14にもなって、まだマトモにお使いも出来んのか!!」
…というお婆さんの怒鳴り声が聞こえて数分。この店の店主だろう。
奥の部屋から、少女がケーキと飲み物を持って現れた。それまでキョロキョロそわそわしていたクーフィアが、やっと落ち着いた。

「あっ、怒られてた人だ〜」
ケラケラと笑うクーフィアに少女が睨むも、クーフィアは動じない。アードライ達よりもずっと幼い頃からカルルスタインで鍛えられてきただけある。少し年上の少女など、怖くもなんともないらしい。
アードライとエルエルフの元にケーキと紅茶を置いて、少女の手が止まった。

「生意気なこと言う子には、お菓子あげないでおこうかな〜?」
「なんでさ!オマエこそ、お店の人のくせに生意気」
「今日は休業日だから関係ないの!」
そんな事はないだろう…と思ったが、アードライは口をつぐんだ。場をややこしくするのはやめよう。エルエルフはさっさとケーキに手をつけている。

「君、年いくつ?」
「…じゅうご」
「クーフィア、お前は13だろう。なぜ嘘をついた?」
「エルエルフは黙ってて!」
「ほーら、私の方が年上じゃない。私にはパトリシアって名前があるの。年下は年下らしく振る舞いなさいな」
「はいはい、じゃあパトリシア…お菓子ちょーだい」
まだまだ年上へ向ける言葉ではなかったが、パトリシアは満足したらしい。よくできました、とクーフィアの頭を撫でる。クーフィアは慣れない行為に百面相をしながら、ケーキにパクついた。
「…あまい」


***


「ねえねえ、あなた達の名前って…」
そう言いながら、パトリシアは近くから自分が座る椅子を持ってきた。いつかハーノインが言っていたように、女子という生き物はおしゃべりが好きらしい。…上司の三つ編みの女性を除いて。
「えっとねぇ、ボクがクーフィアで、こっちがアードライ、そっちがエルエルフだよ」

「もしかして、あなた達って軍の人なの?」
途端に空気がピリリと張り詰める。
「何故、そう思う」
「名前だよ。普通、一般人はL11とかA3、Q4みたいなコードネームで呼び合ったりしない」
「…そうだな。で、だったら何なんだ?」
「殺気を出しながら喋るのやめてもらえますかね、エルエルフさん。深い意味は無いですよ?私よりも年下の子まで、軍人として育てられな きゃいけないほど、ドルシアの情勢は大変なのかな…って思っただけです……」
パトリシアは悲しそうな顔で窓の外を見た。

「私たちのような若い軍人は、親が居なかったり、家庭の事情で生活できない子供たちが集められただけだよ」
「じゃあ、子供たちの居場所が出来たって事なんですね!居場所を貰う代わりに、祖国のために訓練をする…へぇ〜」
現実は、そんな甘いものではない。しかし、パトリシアの安心した顔を見て、アードライは気圧され否定することが出来なかった。

「パトリシア〜!ちょっとこっちを手伝っておくれ!」
「はーい!じゃあ、少し席を外しますね」
パトリシアが席を立ってからガランとした空間。
「ボクらが居場所を貰うためには…敵を殺して、裏切り者には死を与えて、それじゃなきゃ生きてけないのに。……ノンキな奴」
クーフィアはケーキを思いっきり頬張り、眉をひそめる。
「…あまい」



↓宜しければ感想を…



[back]

top



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -