「ジェラールッ!!!!」



その背中を見つけた瞬間に、あまりに嬉しくてエルザは叫んで彼の背中に飛び込んだ。



「エ、ルザ…」



驚いた様子のジェラールだが、優しく彼女の体に腕を回しゆっくりと、子供をあやすように静かに撫でた。
珍しく鎧を纏っていない彼女から温かい人の温もりを感じる。


そこで、本当に自由になれたのだと実感した。



「ジェラー…ル…うっ…!!」
「エルザ…」



嗚咽を漏らしながらもしがみついて離れないエルザ。

思わず笑みが零れて、それまで張り詰め続けていた緊張がふっと緩んだ気がした。



「エルザ、ゆっくり話がしたいんだ。だから話が出来る所に案内してくれないか?…それに、ここは人が多すぎる」



ここは公道の真っ只中。通行人の視線が生温かったり、痛かったり…。
しかも評議院はすぐそこにあって内心良い気分ではないのだ。

それに、エルザとゆっくり話をしたいのは本当の事だ。
今までのことやこれからのこと、たくさん話したいことがある。



「わかった…。こっちだ」


ぐしゃぐしゃになった顔を必死に拭いて、泣くのを耐える彼女に柔らかな微笑みをかけるジェラール。

エルザはぐんぐをと歩き出し、しかし右手はしっかりジェラールの左手を掴んでいた。
彼女は毛頭離す気はないらしい。
ジェラールはクスリと笑って黙ってエルザに引っ張られていった。




















引っ張られて着いたのはどうやら彼女の家らしい。
勝手知ったる風に扉を開けて中に入り、ジェラールに椅子を勧めて自分も正面に腰かけたところを見ると、やはり彼女の家なんだろう。



「エルザここって…?」
「私の家だ」
「あ、やっぱりそうなんだ」



歩いている途中で落ち着きを取り戻したエルザが、私の家ではまずかったか?と首を傾げた。

ジェラールはエルザの問いに首を振り、ゆっくりと彼女の部屋を眺めて穏やかな口調で説明をした。



「今こうやってエルザの部屋にいられる事が信じられなくてな…。もしかしたら夢を見ているんじゃないかって思ったんだ。」
「あぁ。私も夢を見ている気分だとても良い夢を…」



夢なら覚めなかったらいいのに、と弱々しく呟いたエルザの頭にジェラールは自然と手を伸ばしていた。



「夢じゃないさ。だってほら」



ジェラールは撫でていた手を頭から頬に移動させそのままフニッと軽くつねってみせた。



「はにほすふ」
「夢じゃないよ。だって痛みを感じるだろ?だから夢じゃない」



な?と笑うジェラールにエルザは泣きたいような衝動にかられたが、ふと気がついて彼を睨み付けた。



「いふまでふへっへるんは」
「え、あぁごめん」



ほとんどハ行しか言えていないエルザの言葉を普通に理解したジェラールは直ぐ様手を離した。



「それで、どうして釈放になったんだ?」



場を改めるためか、気持ちを切り替えるためかエルザは咳払いをすると、真剣にジェラールに向かい合った。

対するジェラールはそんな生真面目な彼女に若干の苦笑いを漏らしながら事の一部始終を語り始めた。

















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