街にでて、まずは生活必需品を買い揃えた。
衣服や歯ブラシはもちろん、ついでにカップをお揃いで購入した。
「後は、何かいるものはないか?」
「いや、もう十分だと思う」
ジェラールの両手にある大量の袋をみて、確かにもう十分な気がする。
しかし、エルザとしてはもう少し衣服を買いたいところだったが、エルザのお金だからと遠慮されてしまって本当に必要最低限しか買わなかった。
しかも荷物はほとんど彼に持っていかれ、エルザは軽いものしか持たせてもらえない始末。
なんだか複雑な気持ちである。
「ジェラール、重いだろ。私も荷物持つぞ」
「ありがとう。でも全然重くないから大丈夫だ。それに荷物持ちは男の仕事だからな」
にこやかにそう言われれば返す言葉もなくなってしまう。
仕方がないので、写真たてを見るためエルザがよく行く雑貨屋に向かうことにした。
カランカラン、と扉を開けて店内に入る。
いらっしゃいませ、という明るい女性店員の声を背に真っ先に写真たてが置いてある棚の前まで向かった。
「どんなのがいい?」
「エルザが気に入ったものでいいよ」
「……選ぶのがめんどくさいんだろ」
エルザが気に入ったものってことは裏を返せば何でもいいという事ではないか。
「違う違う。俺はエルザが選んだものがいいんだ」
「どう違うかがわからない…」
「じゃあ言い方を変えよう。俺はエルザが気に入ったものを愛したい」
「…………はぁ?」
もう全く意味がわからない。
わからないのに何故か体温が上昇する一方だ。
ジェラールは相も変わらずにこやかに微笑んでいるだけだし、エルザはいろいろ諦めた。
「わかった!じゃあこれに決まりだ!」
こうなりゃやけくそだ。
一番気に入ったものを手に取り、さっさとレジへ向かう。
後ろでクスクス笑う声は無視した。