※連載設定


ジェラールが妖精の尻尾に迎えられて数日がたったある日。
突然妖精の尻尾に思わぬ来客があった。



「邪魔するぞ」



そう言って入ってきたのはグレイの弟弟子であるリオン。



「やぁお久しぶりだね」



そして後ろにはブルーペガサスのヒビキ。



「リオンにヒビキじゃねーか」
「なんだか不思議な組み合わせね」
「まぁな。たまたま道中で出くわしてな」



グレイとルーシィに、リオンが答えるように簡単に説明をする。



「そうそう、フェアリーテイルに用事があるっていうから一緒に来たんだよ」



ヒビキがそつ付け加えて、得意のスマイルをしたが、生憎とフェアリーテイルのギルドにはその笑顔に引っ掛かる女子はいなかった。



「へぇー、で用ってなに?」



ルーシィは慣れたように用件を聞く。
ヒビキが笑顔のまま固まっているのは気にしない、と言うよりもガンスルーである。



「あぁ、それなんだが…」
「ジェラール・フェルナンデスはいる?」
「ジェラール?」



眉根をよせて怪訝な顔をするルーシィ。
隣にいるグレイやジュビアもぱっとしない顔だ。



「あぁ、“罪人”ジェラール・フェルナンデスだ」



………え?
と遠巻きに様子を伺っていたギルドメンバーも全員が動きを止めた。



「彼が評議院から釈放され、ここに入ったと噂を耳にしてね。どういうことかと彼の本意を確かめに来たんだ」



ジェラールの本意…。

ジェラールの今までの経緯は世間には公になっていないが、この間一緒に戦ったギルドの人物達にはその事が筒抜けでも、可笑しくはないだろう。

マスターとミラは大事な用があると不在。
そんな時に限ってやってくるな、とギルドメンバーは全員が心の中で思った。
しかし、またもやタイミングの悪さが重なってしまった。

キィ...とドアが音をたて、そこからエルザとジェラールが並んでやってきたのだ。
それを見た部外者である二人がそれぞれに厳しげな顔をするのに、ギルドメンバーは顔をしかめ、今しがた来たばかりの二人は一触即発な雰囲気に戸惑っていた。



「ふーん、本当にフェアリーテイルに入ったようだね」



ジロジロとまるで値踏みをするように視線をくれるヒビキ。
リオンも何も言わないもののジェラールを見る目はヒビキとそう変わらないものだ。



「グレイの弟弟子にブルーペガサスのヒビキ…何か用か?」



二人のジェラールを見る目があまり宜しいものではないのは嫌でもすぐにわかった。
仲良く、とか穏便に、なんて言葉には程遠い雰囲気にエルザは鋭い声を発する。

対してヒビキは少しも動じた様子もないようでひょうひょうと慣れたように頭を下げた。



「エルザさんの美しい姿を拝見に…っ言いたいところですが、残念ながら今日の目的は隣の彼なんです」



いつものように振る舞うヒビキだが、その目は笑っていなかった。
二人のジェラールを見据える目は冷静に、見極めようとする真剣なものだ。


試されようとしている。


そんなのは嫌でも解りきっていた。


しかし、ジェラールも真っ向から受け止めるかのように視線を反らさないでいる。

それでも心配になって、エルザは無意識に彼の服の裾を掴んでいた。
それに気付いて慌てて引っ込めようとしたら、ふっと彼が微笑み、頭を撫でられる。
それはまるで、大丈夫だ、と暗に伝える様に優しく、あたたかい。



「俺に何の用ですか?」



でも、それは一瞬に等しく、ジェラールはすっと表情を変え、エルザを背に庇うように一歩前へ出た。ギルドのメンバーは見守るように黙っているしか出来ない。

静かな、重苦しい時間が流れる中、最初に沈黙を破ったのはリオンだった。



「単刀直入に聞こう。何故お前はここにいる?本来評議院にいるはずの罪人がなぜ、ここでのうのうと生きていられる」
「オイリオン!!てめぇ!!」
「グレイ、いい」
「…っ」



胸ぐらを掴もうと声を荒げるグレイを声だけで抑え、ジェラールは自嘲気味に笑う。



「でもよ!!」
「いいんだ。彼の言う通りなんだから」



そう、グレイに悲しく微笑んで、真っ直ぐにリオンを見据える。



「俺は確かに罪人で、ここにいてはいけない人間なのだろう。本当なら評議院で罪を償うべき人間だ」
「それが解っていながら、なんでフェアリーテイルにいるのかな?」



ジェラールの言葉を受けて、ヒビキがそう返す。

その時、また服の裾を握られる感触がして、内心安心する。
大丈夫、大丈夫だ。
先程よりも声をしっかりはって、ジェラールは胸の内を素直に口にする。
ここで誤魔化しは効かない。
この二人は本心を聞きに来たのだから、答えるべきだろう。



「俺は、死んで償うのが一番良いと思った。俺みたいな人間はさっさとこの世から消えて無くなるべきだと」



そう…思っていた。
あの時までは…。



「でも、それは俺が楽になりたくて逃げているだけなんだと…彼女に気付かされた。現状から逃げずに、辛いことも悲しいことも、受け止めて生きることで、罪を償うべきだと」



過去から、失ってしまった記憶から、現在から、抗い、流されることなく足掻き続けること。
それが自身に与えられた罰であり償いだ。



「俺は彼女に、エルザに生きろと言われた。一番辛い思いをさせ、一番俺を憎んだであろう彼女に…」



死ぬのは簡単なことだ。
対して生きることは酷く難しい。
この世に生を受け、生き続けることが、どんなに大切なことか…。



「俺はエルザに生きると約束した。だからそれを証明する必要がある。そのために、ここにいる」



しっかりとした目は、意思を称えていた。
それは決して折れることのない意思。



「随分と強引だな」



リオンはそう呟くと、ふっと力を抜いたように軽く笑った。

その瞬間、場の空気が一気に緩んで軽くなった。



「エルザさんのためだって言うなら反対はしないよ。ただ…泣かせるような事のないように」



女性の涙は嫌いなんだ、とヒビキが片目を瞑る。



「フェアリーテイル全員の意志でここにいるようだし、これ以上口出しはしない。先程はすまなかった」



リオンが素直に頭を下げると



「バーカ。端からてめぇの出る幕なんて無かったんだよ」



と、グレイがリオンの頭を叩いた。

二人がやいやいやりだすのに、漸くギルドゆらいつもの雰囲気が戻ってきていた。
…と。



「たっだいまぁ!」



賑やかの筆頭ナツが帰ってくれば、たちまちギルドは賑やかになる。

帰ってきたナツは、リオンとヒビキがいるのに驚いてさっさとそちらでわいわい始めてしまう。

それを傍目に、ジェラールは未だに服を掴んで放さない手に、自分の手を重ねた。



「エルザ…俺は何があっても君から離れたりしない」
「…当たり前だ」



ぎゅっと手に力を入れると、同じ力で握り返される。


大丈夫。ここにいる。
ずっとずっと、君の側に…―。












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遅くなりましたが、藍様リクエスト
連載設定でギルドに入るのを妖精以外から反対される。
だったのですが…
反対、されてるかなコレ?
あれ、おかしいな…( ̄▽ ̄;)←

出てきたのがリオンとヒビキってのは指示が無かったので、単に管理人の趣味です
初だ書きったのでキャラが掴めてなくてスミマセン…


こんなもので良ければ、藍様に捧げます!!
いつもいつもありがとうございます!
どうぞこれからもヨロシクお願いします!

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