ある星空が綺麗な夜、エルザは城の庭園から夜空を見上げていた。
出来上がったはがりの新たな城に月の光が反射して幻想的な雰囲気を醸し出している。
見上げれば綺麗な満月が夜空を照らしているのがまた美しい。

しばらく、そうして静かに夜空を見上げていると、足音が聞こえてそちらに視線をずらした。



「綺麗だな」



そこにはこの国の王であるジェラールがいた。
穏やかな表情で頭上を見上げる彼に、エルザは慌てて頭を下げだ。



「こんな遅くにどうされたのですか?」



もう夜も更けて数時間が過ぎようとしている。
人は皆寝ているはずの時間だ。
そんな時間にこんなところへきてどうしたのかと問えば、苦笑が返ってきてエルザは首を傾げた。



「それはこちらの台詞だ。女性がこんな夜更けに一人でいるものではないよ」
「ご心配には及びません。これでも戦いに生きてきた者ですので、そこら辺の者になど負けません」
「そういう意味じゃないんだが、まぁいい」



クスリと笑って、彼は来ていた上着をエルザの肩にかける。
そうして、隣に並んで頭上を見上げた。



「お体が冷えてしまいます」
「私は大丈夫だから、君が着ていろ」
「しかし」
「エルザ…」
「……はい」



名前を呼ばれ、エルザは大人しく上着を借りることにした。
寒くはなかったが、上着から温もりが肌に伝わってきて、何故だか心が安らぐ。


国の復興はまだ完全ではないため、王であるジェラールは毎日忙しく働いている。
エルザとて、忙しい毎日だがジェラールは国の頂点に立つものとして、誰よりも働き、寝る間も惜しむようだった。

この城だって、彼は一番最後に建てればいいと進言していたのだが、国民は一番始めに建てるべきだと、王を押しきって工事を始めた。
それも一重に、目の前にいる王の人間性や品格があってこそなのだろう。
国民を思う気持ちが、ひしひしと伝わってくる。


そんな彼は、寝なくてはいけないはずに隣で夜空を眺めている。
疲れているはずなのに、全くそういった素振りを見せないところは、もう流石というしかなかった。



「王は、この国は好きですか?」



彼の横顔を眺めていたら、自然とそんな質問が口をついて出てきていた。



「あぁ、好きだ」



間髪入れずに、返答が返ってくる。
純粋にあぁ、凄いな、と思う。



「エルザは?」
「好きです、生まれ育った場所ですから」



そうか、と静かに呟く彼。


ひゅう、と風が吹き抜け髪を揺らす。
切ってしまったから前のようにはなびかないが、それでもだいぶ長くなってきた。



「髪、伸ばすのか?」
「わかりません。…でも、短いのが案外楽だったのでもしかしたらこのままの長さを維持する可能性もありますが」



いい終える前にすっと、手がのびてきて一束髪を掬われる。

どうしてだろうか。
その瞬間胸がどきっとした。



「私は今の髪型も似合っていると思うぞ」
「あ、りがとうございます」



手がそのまま、頭を撫でるように髪を梳いて離れていく。



「それじゃ、早めに寝るんだぞ。おやすみエルザ」
「おやすみなさい」



微笑んで、背を向けて去っていくジェラールにどくんどくん、と心臓が早鐘をうち始める。

落ち着かせようと見上げた夜空は、星が綺麗に瞬いていた。










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風恋様リクエスト
ミストガン×ナイトウォーカーでした!

この二人は初めて書いたので、不安な点も多々ありましたが、結構楽しく書くことが出来ました!

風恋様、こんな作品でよろしければお持ち帰りください!

リクエストありがとうございました!




お題thanks*ひよこ屋様
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