ジェラール
なぁ、ジェラール…
私は、お前が
「嫌いだ」
「ふっ…大概お前も可愛くない奴だな」
形のよい唇をつり上げて微笑むこいつは詐欺師なんて職業がよく似合いそうだ。
人を見下す目があまりにも冷淡で一切の感情を映さない。
表情は笑顔であっても、決して心からの幸せな笑顔ではなかった。
「エルザ」
「私の名を呼ぶなっ!!」
同じ顔で、声で、私の名前を呼ばないでくれ。
「何故だエルザ、今更じゃないか?」
「なにが、なにが今更なんだっ…!!あの時のお前とは違う!!今のお前は、私の知っているジェラールと違うっ…!」
たがら、気安く私の名前を呼ばないでくれ。
今のお前なんて、お前じゃない。
「俺は俺だよ、エルザ」
「違う…」
「違わないさ。顔も、声も、魂だって同じさ」
「違う違う違う違う」
お前はお前じゃない。
魂は穢れた。
存在は前科以上の罪を負った。
顔や声は一緒でも、
「お前は悪魔だっ!!」
「ハハハハハッ!!!いいぞエルザ!最高だ!たまらないよ、その表情」
視界が歪む。
流したくもない水が目から流れ落ちる。
握った拳の爪が肌に突き刺さって血が滲む
。
あぁ、なんて鈍い痛みなんだろうか。
「お前は俺を殺せない」
今までの声のトーンとが変わった。
低く、確信と自信に満ちたその声は、吐息混じりに耳元へと吹きかけられる。
酷く気持ちが悪くなった。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
頭はガンガンと鈍く痛みを放ち、手のひらからは次第に痛みが引いていった。
「俺が好きだろ、エルザ」
血の出る手を優しく包み、ジェラールは口付けをする。
あぁ、甘い。
気持ち悪くなるほどに、むせかえるくらいに甘く、甘く、エルザを絡みとる。
「っ…!」
ふと、チリッとした痛みに顔を歪めれば視界には満足そうに微笑む彼がいた。
舌先で思い切り傷を押し込められたらしい。
噛まれなかっただけまだましかと、虚ろな目でジェラールを見下ろす。
「ははっ可愛い」
エルザの反応がたいそうお気に召したのか、ジェラールは何度も傷口を舌先で攻撃する。
手からは鋭い痛み、頭からは鈍い痛みを発する体。
そして、目の前には憎らしいほど愛してやまない彼がいる。
あぁ、甘い。
甘くて甘くて、苦い。
「お前なんか嫌いだ」
それでも私は…君
を愛している。
―――――――
後書き
黒ジェラール×エルザ
を書きたくてやってしまった\(^o^)/
黒ジェラール好きです
んで結局ジェラールを嫌いになれないエルザうまうま(^q^)