「あぁ〜あ、雨余計ひどくなってきたなぁ…」
「む、だから私は走って帰ればとあれほど!!」
「でもエルザ、走るったって家まで大分遠いからどっちにしろずぶ濡れになるぞ」
「………。」
不機嫌そうにエルザはジェラールに一瞥をくれるとプイとそっぽを向いてしまった。
学校を出てちょっとしたら突然雨が振ってきた。
急いで近くの公園の木の下に一時避難したのだが………止む気配が一向に感じられないどころか、逆に強くなっている。
「夕立から本降りになってきやがったか」
夏によくある夕立だと思って、走って帰ると言い張るエルザを引っ張ってきたのに、これでは一時避難ではなくなってしまった。
せめて店に避難すれば、と思ったがここ近辺は住宅地ばかりで店がない。
コンビニくらいあれば…などとは最早考えたって仕方ない。
「エルザ、今日親は?」
「どっちも仕事だ」
あちゃぁ…と肩を竦めるジェラールに、エルザは「お前の家もか…」と呟いて 溜め息をつく。
どのくらい待てば雨は止むだろうか…。
「エルザ、もしかしてまだ走る気でいる?」
「生憎そんな気は失せた」
「ふっそれは良かった」
透ける心
配がなくなった、とジェラールが笑う。
「……………は、破廉恥なっ!!!」
ボフッと音がなりそうな勢いで顔を真っ赤にしたエルザが自分の肩を抱いてジェラールを睨み付けた。
ジェラールとしては顔を真っ赤にしながら怒る彼女は怖くも何ともない…と言うより可愛いのだが、本人には自覚はないようなので黙っておく。
「破廉恥って…エルザが自覚ないから俺が心配してやったんだろ。ブラウスの下にTシャツでも着てたらいいけど、エルザ今日は下はく」
「わかった!!!わかったからそれ以上言わんでいいっ!!!」
「…ま、わかったならいいけどな」
ちゃんと気を付けろよ。なんて軽々しく言うこいつの頭はどうなってるんだ、とエルザは顔が真っ赤なのを必死に隠しながら疑った。
あそこでジェラールの言葉を遮らなかったら、きっと色を言い当てられていた。
…………やっぱり黒は目立つだろうか。
でもこれ結構気に入っているからなぁ……。
「………」
下を向いて黙ってしまったエルザ。
ジェラールはそんな彼女に笑いかけて自分の方へ引き寄せた。
「ジェラール!?」
いきなりのことに驚いて体勢を崩したエルザは簡
単に彼の腕の中に収まってしまう。
真っ赤な顔でジタバタ暴れようとするエルザを抱き締めて彼は笑う。
「寒い…」
「だからと言ってくっつくなっ!!」
「だってエルザあったかい」
むぎゅ〜っと彼女の首筋に顔を埋めるジェラール。
エルザは余計に顔を赤くし、くすぐったさに身をよじった。
「っくしゅん!」
「ん、エルザも寒いのか?」
「いや…大丈夫」
「嘘つけ。くしゃみなんかして、本当は寒いんだろ?」
そう言うとジェラールはエルザから離れてセーターを脱いでしまう。
「………。」
離れた体温が恋しいな、なんて思ってしまって自分が恥ずかしくなる。
何を考えてるんだ…。
視線を地面にずらした頃、肩に服をかけられる感触と、すぐにまた抱き締められた。
「まだ寒いか?」
心配そうに顔を覗き込む彼に、エルザは自然と笑顔になった。
「うぅん。あったかい」