それは、部屋でのんびりしているときだった。
ふと、彼のソファに置かれる手が気になった。
自分よりも大きい手。
爪の形や指の長さも違う。
しかし、男性にしてみてら綺麗な手だなと思う。
触れてみようか。
そう考えた瞬間だ。
視界の中心にあった彼の手が動いて、上に消えたかと思うと頭に重みが加わった。
それは左右に動いて頭を撫でる。
「なにをするんだ」
彼が頭を撫でてきたのに照れて、恥ずかしさでいつもより声が低くなるエルザ。
「んー、なんでずっと俺の手を見てるのかなぁと思ってさ」
そんな彼女ににこやかに笑って返すジェラールは、あから様に顔を赤くするのを見て楽しんでいた。
「ば、れてた…?」
「そりゃあガン見だったからな」
エルザは頬が熱くなるのがわかってプイと顔を彼から背けた。
しかし、依然として頭の上にはジェラールの大きな手が乗っている。
「なんで見てたの?」
撫でられる感触に軽く酔いながら、あぁ手のことか、と少しして気づく。
「見ちゃ悪いのか?」
我ながら可愛くない、と思いながら相手の反応を待っていると…
「俺もエルザの手、好きだよ」
と、頭上にあったはずの手が自分の手と重なっていた。
「俺"も"って、私はそんなこと言ってないぞ」
「でも好きだろ?」
「………」
「なっエルザちゃん」
「ちゃん付けきもちわるい」
「きもちわるいってなんだよ」
「じゃあきしょい」
「うん。ごめん俺が悪かった」
「……ふっ」
「……ぷっ…ハハッ」
二人でひとしきり笑ったあと、どちらともなく指を絡めて笑い合う。
そこから互いの体温が伝わるようで、気持ちまで伝わる気がしてエルザはぎゅっとジェラールの手を握った。