エルザは自分の部屋でのびのびとしていた。
ベッドに横になりながら、一枚の写真を見つめ、満足そうに微笑む。

写真の中の二人の人物はお互い思い思いの笑顔でピースをしている。
まるで、幸せの瞬間を切り取ったかのような幸福感がその写真から溢れていた。


その中の人物とは自分と彼のことだが。



「夢みたいだ…」



あまりにも幸せで現実味を感じない。
それでも、こうして形に残っているのだからあれは現実なんだと信じることが出来た。



「エルザ」



コンコンという規則的なノックに次いで扉から声がかかる。
エルザは入って大丈夫だと答えすぐに体を起こした。

それと同時に扉が開かれる。



「良かった。まだ起きてたんだな」
「うん、まだ眠くなかったからな」



にこやかにジェラールが部屋に足を踏み入れ隣に座る。
エルザは自然とそれに安心感を覚えて胸が温かくなった。



「なにをしてたんだ?」
「写真を見ていた」
「写真…?」



首を傾げる彼に手にしていた写真を見せれば合点がいったのかあぁと言ってエルザから写真を受け取った。



「帰ってきたらポストに入っていた」



ギルドから帰ってきた時に見つけ、そのまま部屋に封をしたまま置いておいたのをさっき開けたのだ。

写真を見て顔を綻ばせる彼にそう説明する。
彼はエルザに耳を傾けながら写真から目を離さない。



「いい写真だな」
「あぁ」



ポツリ、とジェラールが口にしたのに相槌を打って、エルザも隣から同じように写真を眺めた。


変わらずに笑い続ける二人。

ついずっとこんな風に笑い合えたら、なんて考えてしまう。



「明日、写真立てでも買いにいこうか」



どうせだから飾ろう?


そう問うてくるジェラールにエルザは頷いた。



「さて、そろそろ寝るか」
「あぁ。そういえばジェラールは何しにここへ?」



ベッドから立ち上がった彼に疑問に思って聞いてみれば、悪戯のような笑みが返ってきてエルザは驚いた。



「ちょっとエルザに会いに来ただけだよ」
「…あ」
「それじゃおやすみ」
「お、やすみ…」



辛うじておやすみとだけ返すと彼は扉の向こうに消えていった。
足音まで聞こえなくなったころ、エルザはぽふんっと枕に顔を埋めた。


あんな表情、初めてみた…。


トクトクと脈うつ心臓の音を聞きながら、眠りについた。



















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