「おっいいねぇ!うんいい顔だよ〜!!」



カシャカシャと瞬くブラッシュ。
随時リクエストや言葉を投げかけてくるカメラマン。
その他照明やメイク直しをしてくれる多くのスタッフに囲まれても、先程のように頬が引きつることはなかった。

逆に、今この瞬間を楽しむ自分がいる。

恥ずかしさや、緊張するのに変わりはないはずなのに…。
隣にいるのがジェラールならば安心していられる気がした。



「うん、今の顔…凄く幸せそうだ」



カメラマンはそう溢すと、撮ったばかりのデータを見直していった。

しばらくして、満足のいくものが撮れたのだろうか、満面の笑みでカメラから顔をあげたカメラマン。



「撮影は終了だ。エルザさん、ジェラールさん…どうもありがとう」



お陰でいいものが撮れたよ、と手を差し出し握手を求める彼に、エルザとジェラールは順にその握手に答えた。



「こちらこそ、貴重な体験ができました」
「ご迷惑をおかけしました」



ジェラールに続いてエルザが頭を下げると、カメラマンはいやいやと首を振って豪快に笑いだす。



「いいんですよあれぐらい!最後にはとびきりいいものが撮れたしねぇ。後半持ち直してくれたし、全く問題ないですよ」
「そう言ってもらえると助かります」
「ガハハッ!!エルザさんが持ち直せたのは隣の彼のお陰ですね?」
「え…!?」
「カメラ越しに、二人の信頼し合っている気持ちが伝わりましたからねぇ」



ニコニコと、笑うカメラマンに顔を赤くしてエルザは隣にいるジェラールを盗み見てみた。



「…………」



あ、顔赤い…。
と、言葉にしかけてあわてて飲み込んだ。
どうしよう。
ジェラールの頬が赤いのなんて初めてみた。
ちょっと珍しいものが見れたためか嬉しい。

盗み見るはずが、いつの間にやらガン見していたらしく案の定目があってしまった。

慌てて目を反らすけど、二人して顔が真っ赤になっているのは見なくてもわかった。



「ガハハッ!!うんうんいいねぇ。」



カメラマンが突然笑いだしてエルザはびくりとした。

しかし、そんなエルザには構わずカメラマンは再びカメラを抱え、



「せっかくだから最後に、二人の自然な写真でも撮りましょう。ありのままの、今のお二人を撮らせて頂けますかな?」



おどけた風のカメラマンに二人は一瞬顔を見合せ、同時に吹き出した。



「是非お願いします」



ジェラールの微笑みまじりの言葉にカメラマンは、よしきたっ!!と張り切ってカメラを構える。
それがまた面白くてエルザは再び吹き出してしまった。

カメラマンは二人が並ぶと、撮影では言わなかった掛け声を大声で教会に響かせる。



「いちたすいちはー?」
『にーっ!!』


満面の笑みでピースをする二人。
カシャリ、というシャッター音に瞬くフラッシュ。
色々とあまりにアンバランスな気がして、それがまた面白くて笑いだした。
いまこの瞬間が楽しくてしょうがない。

今日一番最高の笑顔ができた気がした。

















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