その後も写真を撮り続けたがどうにもエルザの表情が硬く、一度休憩をしようということになった。


カメラを向けられるとどうしても頬が引き攣り自然な表情が出来ない。
カメラマンは等身大のエルザさんでいい、と言ってくれていたが今となっては等身大の自分すら解らなくなってしまっている。
それに、笑顔にならなくては、と意識すればする程にどんどん悪化しているような気さえした。

こんなことでは一緒に写真を撮っているジェラールや、カメラマン達スタッフに迷惑をかけてしまう。
と、いうか既にかけているのだが…。



「はぁ…」



重い溜め息は晴れ晴れとした太陽の元に溶け込んでいく。
見上げれば眩しいくらいに晴れ渡った青空が広がっている。
まるで今の気分と反比例しているようだ。

虚しいくらいの青に、ふとジェラールの髪の色を思い出した。
そういえば彼の髪の色もこんな青にだったな、と。
ある時、ジェラールはエルザの髪を緋色に染まる空の色“スカーレット”だと言ったが、彼の髪だって今みたいに綺麗な“スカイブルー”なんじゃないかと思う。
お互いに空の色だ。



「何を見てるんだ?」



ふわっ、と見上げていた空と同じ色の髪が視界の端で揺れた。
ゆっくりと視線をそちらにずらせば白い衣装に身を包んだジェラールが優しく微笑みながら立っていた。



「空を、見ていたんだ」
「空を?」



ベンチに腰かけるエルザの隣に座ったジェラールは、つられるように頭上を見上げた。
そこには、綺麗に澄みわたった空がある。



「ジェラールと、同じ色だと思って」
「俺と同じ色?」
「ほら、髪だ」



そう言って、エルザが彼の髪を指す。

その瞬間ぶわぁっと二人の間を風が駆け抜け、お互いの髪が揺れ動いた。



「それじゃあ、お揃いだな」



俺たちの髪は空の色だ。



「そうだな」



優しく、全てを包み込んでくれるような笑顔にエルザはなんだかほっとして微笑み返した。
すると、ジェラールがもっと笑みを深くしてエルザの頬に自分の手を添える。



「緊張しないで、今の感じでいいんだよ」
「え…?」
「今のありのままの笑顔でいいんだ」
「ありのままの…」



あぁ、そうか。
カメラを意識し過ぎるからいけないんだ。
私らしくない。
周りなど気にせずに、今の状況を楽しもうじゃないか。



「ありがとうジェラール」
「俺は何もしてないよ。エルザの笑顔が見れたらそれでいい」



言いながら、ジェラールはエルザの手を取って立ち上がる。



「そろそろ休憩も終わりだ。戻るぞ」
「あぁ」



エルザは手を引かれながら心の中で、もう一度ありがとうと呟いた。










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