ギルドにはそれぞれの証がある。
ギルドに入る人間はその証を背負うことになる。

簡単に言えばギルドの人間は体のどこかにギルドマークを入れているのだ。



「ここでいいの?」
「えぇ、お願いします」



ジェラールも晴れてギルドのメンバーになるからには例外ではない。
昨日はドタバタしていたためにギルドマークを入れる暇はなかく、ただの歓迎会という名の飲み会で終ったのだが、今日は違う。

朝早くにエルザに連れられいきなりミラジェーンの前に座らせられた。


意味が分からなかったジェラールだが説明を受けた今は落ち着いて静かにミラジェーンにマークを入れて貰っていた。



「出来たわよ」



明るいミラジェーンの声に顔を上げれば真剣な表情を浮かべるエルザが目に入った。

彼女は一心にジェラールの首筋を見つめる。
右側後ろ寄りのうなじ辺り。
そこには青色のフェアリーテイルのギルドマークがあった。

たった今、ミラジェーンにおしてもらったものだ。



「似合うか?」
「あぁ、似合っている」



少しおどけて聞いてみたはずが真剣に返されて可笑しい。
クスリ、と笑みを漏らしてしまった。



「これでエルザと同じだ」
「?」
「やっと君と同じところに立てる」



同じ誇りを掲げ、仲間を想い、自分の信念を貫き通す、誇り高き妖精の尻尾。
エルザのいるそこへ加入することが出来るなんて、まるで夢のようだ。



「改めて、ようこそジェラール」
「ありがとう」




















「あの二人って絶対出来てるわよね!」
「怪しいです!」



ジェラールとエルザから少し離れたテーブルには目を細めて怪しげな目をするルーシィとジュビアがいた。
そして


「少なくとも好き合ってるのは確かよね」
「あれミラさん!いつの間に!?」



いつの間に来たのかミラジェーンがいた。



「お邪魔したゃ悪いから抜けてきちゃった」



ニコッと笑うミラにルーシィは苦笑いを浮かべた。



「ぶっちゃけあのピンク色の空間に一人は辛いですよね」



ピンク色の空間、主に例の二人の周りの事だ。



「まぁ仕方ないわよ。でもあんまりピンク色過ぎても困りものだけど」
「ジュビアもグレイ様とあんな雰囲気に包まれたい!!」



目をキラキラさせて自分の世界に入り込むジュビアに苦笑いしながら、ルーシィとミラジェーンは遠目に二人の観察を続ける。



「あんな可愛い笑顔のエルザ見たことない」
「凄く楽しそうよね」



いつもは厳しくて厳格のあるエルザが、本当に無邪気で年相応な表情をすることにルーシィは心底驚いていた。

あんな表情を意図も簡単に引き出せるジェラールは、彼女の中でどんなに大きな存在なのだろうか。



「大き過ぎても、困りものだけど」
「なにルーシィ?」
「いえ、ただの独り言です」



大き過ぎるから、ジェラールがいない間のエルザはまるで脱け殻のようだった。
表情は死んで、生きる活力がちっとも感じない。
あれはエルザではなかった。
手厳しくも生き生きとした彼女の姿は影を潜め、ただ寂しそうな背中だけが印象的だった。
見ていられない位に。



「ま、今は幸せそうだからいいけどね」



過去や未来よりも、今が大切である。
今の彼女が幸せならばそれでいい。

毎日評議院に足を運んだ甲斐があるというものだ。



「さて、と。私ちょっと仕事探してきますね」
「わかったわ」
「妄想中ジュビアをよろしくお願いしますね」
「後でグレイに預けておくわ」
自分の周りに花を咲かせるジュビアに苦笑してルーシィはその場を離れた。




そして、クエストボードを見たルーシィはニヤリと微笑んだ。











*追記*
11/08/06誤字脱字その他もろもろ修正










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