数時間がたってジェラールは酒で潰れたエルザを背に帰路についていた。




―彼女とちょっと別れて、ナツとグレイと飲んでいた時の事だった。



「なんだよぉ?もうかえんのかぁ〜」
「朝まで飲もうぜ」



と肩を組んできたナツやグレイに断って、飲み潰れたらしいエルザをルーシィとジュビアから回収したのだ。





放っておくのも忍びないし、いつもなら悪酔いしない彼女が珍しい、と口を揃えるギルドメンバーだったので心配になって連れ帰った次第である。




「大丈夫か?」
「………」



問いかけても返事はない。

こりゃ完全に潰れたな、と滑り落ちかけた彼女をしょい直して歩を進める。



「ん゛…」



揺らしたせいか、彼女から苦しそうな声が漏れたが、もう一度問いかけても返事がなかったのでまだまだ酔いが覚めないようだと判断した。



「あったかいな」



背中から伝わる彼女の体温が温くて心地よい。

深い夜闇だというのに、彼女がいるだけで全然違う闇になる。
伝わる体温に安心するのにジェラールは苦笑した。



「俺はガキか」



まるで夜が怖い子供のようだ、と。













「さて、と」



家、といってもエルザの家に着いたジェラールは予め彼女から失敬した鍵を使って家内に入ると、まずはベッドに彼女を寝かせた。

揺らしても動かしても起きないところを見ると、これは重症だ。
飲み過ぎである。



「全く…飲み過ぎだぞエルザ」
「ジェ、ラ…ル」


髪を軽く梳いてベッドサイドから離れようとしたら腕を捕まれた。
驚いて振り返ってみれば、エルザが真っ直ぐにこっちを見上げていた。



「ジェラール」



もう一度、名前を呼ばれた。
心なしか、どこか寂しそうな声音に聞こえる。



「どうした?」



ジェラールは優しく手を握ってベッドに腰かけた。

そして直ぐに様子がおかしいことに気づく。


本格的に、彼女の目尻に涙がたまっていたのだ。



「え、エルザ!?」



どこか痛いのか?
なんかあったのか?

自分でもびっくりするくらいあたふたして、思わずエルザの手を強く握ってしまった。

しかしエルザは首を振る。
首を振って「ジェラール」と呼びかける。


仕舞いには夜泣きをする子供のように泣きながら抱きついてきた。



ジェラール!ジェラール…なく…な…よ…」

「え?」

「もうっいなくならないよな」



ずっとずっと、ここに…。



エルザが泣きじゃくりながらそんなことを言う。

あぁ、そうか。

ジェラールはなぜ彼女が泣いているのか、理由がわかった。

不安なんだ。

だから、悪酔いして、酒のせいで余計に情緒不安定になった。



ジェラールは泣きながら抱きつく彼女の肩をきつく抱き締め返した。



「いなくなったりしないさ。ずっとここにいる」



彼女が安心出来るように。



「エルザの側にいるよ。約束する」



どんな理由でも君が泣くのは見たくないんだ。




「約束、だからな」




だから、笑って。










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