火竜とはナツのこと、星霊使いとはあの金髪の可愛らしい女の子のことだろう。



「あぁルーシィというのだ。ナツとよく出掛けていると思ったら・・・」
「まさか俺を釈放する為に・・・な」
「・・・すまん」



ん?とジェラールは急に謝った彼女を見つめた。

目を逸らして、後ろめたいのか下を向いている。


なんとなく・・・彼女が何を思っているのかが分かってしまった。


彼はフッと笑って、エルザの髪を撫でた。



「俺は、あの時エルザがナツ達を止めたことは間違っていなかったと思うぞ」
「・・・・・・でも、」
「それに、ナツ達が俺を釈放しようと頑張ったのだって、根本にはエルザがいるんだよ」
「・・・どういう、ことだ?」



サラサラと指の間を抜ける髪の感触に軽く夢中になる。




「多分、エルザが毎日沈んだ顔して、ギルドの皆が心配してたんだろ。だからナツが俺を自由にすればエルザが喜ぶと思った。」
「・・・そっか」
「俺の憶測に過ぎないが、恐らくこんなところだろ?」
「うん、ナツならやりかねん」



クスクス。

笑うエルザ。

漸く笑顔に戻った彼女の髪を梳くジェラール。

自然と二人の間には穏やかな時間と笑顔があった。



エルザは久しぶりに、心からの安らぎを感じていた。

ジェラールが目の前にいる。

それだけで、こんなにも温かくて安心できるなんて不思議で仕様がない。

でも、とても心地が良くてそんなのどうでもよくなってしまう。





「フェアリーテイルの人達にはきちんとお礼を言わなくちゃな」
「そうだな。私も、皆にお礼を言いたい」




そうだ、とエルザがまだ飽きもせず髪をいじっている手を掴んで止めた。
ジェラールが不服そうな顔をするのをよそにしっかり握りこんで、エルザはジェラールを逃がすまいとするように、念を押すような慎重さで聞いた。



「お前は、フェアリーテイルに入るんだよな?」
「・・・・・」
「なぜ黙る!!」
「いや、その・・・。」



エルザは握った彼の手を離さない。
離したらまたどこかえ行ってしまいそうな気がして怖かったから。
ぎゅっと力を込めて、真っ直ぐに彼の目を見た。



「・・・・エルザ」



根負けしたかのように、ジェラールは苦笑いをして力を込めて握ってくる彼女の手に自分の手を重ねた。
少しだが、小刻みに震えているのを安心させるように。



「俺は、入りたいよ」
「だったら」
「聞いて、エルザ。少しでいいから、俺の話を聞いてくれないか・・・?」



せめても不安にならないように、極力声を柔らかくする。
すると彼女は、ぐっとそこまできた涙を堪えるようにして、こくっと小さく頷いた。

それを確かめてから、自分の想いがしっかり伝わるように、ジェラールは震えるエルザの手をしっかり包んでみせる。




「俺は、お前がいるギルドに入りたいよ。でも、でもな・・・お前が良くったって他がよくないかもしれないんだ」
「でも、ジェラールを釈放するために・・・」
「それをしてくれたのはエルザの為だよ。皆エルザが好きだから・・・。俺はお呼びじゃないんだ。釈放の為に尽力はしてくれてもギルドに入るのは許してくれないだろう。そもそも、俺は自由に外を歩けるだけで幸せだっていうのに・・・」



その上、ギルドに入りたいなんて・・・。

そう言おうとしたところで、ガタン!!っと突然エルザが椅子から立ち上がりジェラールを無理やり立たせて引っ張った。




「おっおい!エルザ!?」
「聞いてみなくちゃ分からないじゃないか!!」
「エル、ザ?」
「例え反対されようが私は力ずくでもお前をうちのギルドに入れるからな!ジェラール!!」
「えっちょっ」



ずんずんずんずん・・・
エルザはギルドへ向かう。
泣いているような怒っているような表情で。


後ろから見るに・・・泣かせてはいないが、逆に彼女を怒らせたみたいで、なんともどう対応したらいいか解らなかった。


まぁ、泣いてもらうよりかは怒っててもらったほうが気持ち的には楽なんだけど・・・。





















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