蝉の声が五月蝿いくらいに鼓膜を揺らす。7月中旬。
もうすぐ夏休みだ。
「てめぇらぁ、あと一週間で夏休みだからってだらけてんじゃねぇぞ」
銀八の言葉に答えるものは誰もいない。
と、そこで丁度チャイムが鳴り、銀八はさっさとクーラーの効いた職員室へ避難しに行く。
それを尻目に、神楽はけっと悪態をついた。
「アイツらずるいネ。生徒がこうやって暑いなか頑張ってるのにクーラーガンガンつけた職員室いきやがって。教室にもつけやがれ」
「ホントでさぁ…俺暑すぎて溶けますぜィ…」
「しかもこのクソ暑いなか次体育アルよ?」
「プールじゃなくて長距離なのが余計殺意が沸きやさァ」
そう、6限目は炎天下の下男女ともに長距離なのだ。
なぜプールじゃない。なぜあえての長距離なんだ。
「あぁ…だるいアル」
「次サボっちまいやすか?」
「……………」
「……………」
沖田の言葉に、二人は同時ににやりと笑いあった。
悪いことを一緒にする共犯。
わくわくしてたまらない。
ひとまず、保険委員に体調不良だと告げて、二人は屋上に向かった。
途中にある自販機の前で沖田がソーダを二本買って、片方を神楽にくれた。
ありがとネ、と告げれば柄にもなく嬉しそうな笑顔が帰ってきて、素直にお礼をいって良かったなと心底思った。
屋上は風通しはいいが、なにぶん日陰が全くない。
無いわけではないが面積が小さいので、適当なところに座って風を受ける。
中にいるよりはましな風の涼しさに、しばらく二人で黙っていると授業開始のチャイムが鳴った。
今、授業が始まった。
でも自分と彼だけは授業に出ない。
なんだか不思議な感覚だ。
「皆準備体操始めたネ」
「ホントですねィ」
言いながら沖田はプシュ、とギャップを開けそのままソーダを飲んだ。
それを見て、神楽も貰った同じソーダを喉に流した。
シュワシュワと弾ける炭酸と、冷たさが心地良い。
「さぁて、寝やしょいかねィ」
「ん、寝ちゃうアルか?」
ごろんと横になった彼を見てそう言ったら、意地の悪い笑顔が返ってきた。
「なんでさァ、俺が寝ちゃうの寂しいんですかィ?」
「ち、違うアル!!変な勘違いすんなバーガ!!」
「全く。神楽は子供ですねィ」
赤くなった顔を隠そうとそっぽを向くと、きっとまだ意地の悪い笑顔のままの沖田は右手をぎゅっと握ってきた。突然のことにびっくりして、思わず振り返って彼を見てしまう。
「神楽が寂しそうなんでねィ。今だけでさァ」
「……うん」
びっくりした。
びっくりして素直に返事をしてしまうくらいだ。
だって、見たこともないくらい優しい笑顔だったんだ。
胸がきゅうとして苦しいけれど嫌ではない。
なんなんだろう。
神楽はぐるぐると動悸の理由を考えながら、お気に入りのタオルで顔を隠した。
君とタオルとソーダ水
(恋の弾ける音がした)
*おまけ*
土「てめぇら揃ってサボりかあぁ?」
沖「土方さんだって前にねえ様と授業サボったじゃないですかィ」
土「おまっ!なんでそれを」
沖「自分のことは棚上げですかィ」
土「…………わぁったよ。勝手にしろ。単位落としても知んねーからな」
沖「言われなくても大丈夫なんでご心配なく。それよりねえ様に変なこと」
土「してねぇよ!!!!///」
沖「………照れんな気持ち悪ィ…(逆に手を出されないとねえ様が相談してきたのどーすっかな)」
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若干の土ミツ出しつつのおっかぐ
沖田の口調がわからんwそしてこの二人にはあるまじき素直な会話のキャッチボール
きっと暑さに頭がやられていたんだ…←
夏を全面に出ししつつの甘さも出したかった