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突然視界が歪んだ。何だと思う間もなく、一瞬でそれは元に戻った。しかし目の前に広がる光景は先程までのものとはまるで違う、驚くほど美しい空間であった。装飾の施されたアンティークが様々並ぶリビングに、豪華絢爛なキングベッド。勿論天蓋つきである。何だか学生時代を思い出すな、と一度過去を振り返った。ジェームズ。リーマス。ピーター。それからなまえ。
俺は静かに立ち上がった。いや、そもそもどこに座っていたのか、というか座っていたことさえ憶えていないのだが、どうやらベッドに腰掛けていたらしい。ぎしりと軋む音が広い部屋に響いた。

あれ、俺って最初からここにいたんだっけ?

不意に疑問が浮かび上がった。そういえば、俺はどこか別のところで戦っていた筈だ。どこだろうか。腕組をして、ゆっくりと部屋を歩いた。床は大理石でできていてまるで貴族の一室である。ブラック家も要は貴族ではあるが、こんな部屋は見たことがない。何とだだっ広い空間! 俺一人では到底使い切れないだろう。たった一室なのに、端が全く見えない。
とそのとき、突然人が空間の中にぱっと現れた。目を見開いて、俺はその人物を目を凝らして見つめる。次第にその人はこちらへ近付いてきたが、奇妙に速度が遅い。そんなに部屋は広いのか。俺は遠近感がおかしくなりそうだ、と思いながらただただその人を見つめ続けた。

あれ、


「シリウス、貴方どうしてここへ来たの」

震える声で、しかしきっぱりと否定的にその人は俺に言い放った。その人は俺が知っている人物であった。
なまえ。俺が愛した人。もう十何年か前に亡くなっている。そうだ。ジェームズも死んだんだっけか。俺はつい先程まで、ハリー達と一緒に戦って、ベラトリックスと攻防を繰り返して、

「貴方に会いたくなんてなかったのに。まだ、貴方に会うのは先だと思ってたのに」


そうか。俺は死んだのか。







111003
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