「リョーマくん、写真撮ろうよー」
「何で」
「春だしさ、ほら!桜の木の下でどう?」
 めんどくさいだのやだよだのごねるリョーマを、半ば無理矢理に薄紅色の花びらが舞い散る桜の木の下まで連れてゆく。

 この春に青春学園中等部を卒業した不二は、天気の良さを口実に外の空気を浴びに行ってくると家を飛び出した。本当の目的は勿論愛しいあの子。春休みの部活に勤しむリョーマに会いに青学までやってきていた。
 フェンスの外側からみるその景色はとても新鮮で、自分もあの中にいたなんて信じられないくらいにみんなキラキラ輝いていて眩しくてたまらなかった。
 三年生が卒業しても目眩がするほどに頼もしい後輩たちの勇姿は、胸を締め付ける。




「ほらほら、そこに立って」
「は?俺だけ?」
「だって君と桜とか、ちゃんと撮りたいじゃない」
 リョーマを木の下に立たせていざ撮ろうとカメラを構える不二だったが、一向に撮られる姿勢を見せてくれない。
「リョーマくーん?ほら、こっち向いて。またたびでも持ってくればよかったかな」
「猫か!…っていうか俺一人撮られたって意味ないじゃん」
「……リョーマくんっ!」
 ぷいっとそっぽを向くリョーマに不二はがばあっと飛び付いた。うわ、とリョーマはバランスを崩すけれど知らん顔だ。
「なにすんだよ!」
「嬉しいよ!僕と一緒じゃなきゃ嫌なんだね」
「ち、ちがっ!ただ桜と自分だけとか何か気味が悪いから!」
「はいはいわかったよ。じゃあ一緒に撮ろう。はい、もっとくっついてねー」
 一緒に撮る事にして、ぐいっとリョーマの肩を抱いて自分の方へ引き寄せ、腕を伸ばして不二はカメラを構えた。リョーマは諦めたようで、じっとレンズを見る。
「いくよーはい、チーズ」
「………」
カシャッ!
(ちゅっ)






  

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