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『新しいテレビ購入計画完了!』
少し大きな声でそう言いながら朔は満面の笑みで本当に嬉しそうにしている。
付き合ってくれたお礼に帰りのタクシー代は奢ると言い、朔はタクシーをつかまえる。
『にしてもお昼過ぎに会社出たのに、もう6時過ぎてる。なんか食べに行く?』
『え、夕飯までおごってくださるんですか?ありがとうございます。』
そう満面の笑みで答え、拒否する隙を与えないようにする。
朔もこちらの反応に呆れた顔をしていたが、思っていたよりもすんなりと諦めてしまったよう。
『いいよ。今回は奢ってやる。』
『え、焼肉ですか!さすが朔さん!』
『お前…。はぁ。仕方ないか。』
タクシーの中で少し愚痴を言われながらも、新しいテレビを買って気分がいいのか、普段なら嫌そうな顔をする冗談も笑顔で返してきた。
笑って窓の外を眺めていたら、こちらを見て真剣な顔をしている朔に気がついた。
窓に反射して映る朔の顔は、どこか怒っているような、悲しんでいるような、なんとも言えない表情で。
きっとそれに朔も気が付いているのだろう。
タクシーが目的地に着くまで、お互いが話しかけることは無かった。