泣きながら君の名を呼ぶ
頬を流れる涙に気づいたのは、あれからどれほどの時が経ってからだろうか。
失恋とは違う。
でも確かに君は僕の前からいなくなった。
いなくなったという現実を受入れられなくて、君との思い出を辿るように、走って走って君を探した。
相思相愛なのだと信じていたのは、どうやら自分だけだったらしい。
最後にたどり着いたここは、君と初めてキスをした思い出の場所。
街を見下ろせるこの場所を君はとても気に入っていた。
…いなくなる前触れがなかったというわけではない。
でもそれもいなくなった今だからこそ言えること。
それほどまでに君に対する安心感があったということだ。
いなくなってしまった悲しみもあるけれど、それ以上に何も話してくれなかった事実がどうしてもつらく思えてならない。
そんなにも頼りないということなのだろうかと自らを責めてしまいそうになるから。
いなくなった君に触れるように両手を高く空へと伸ばす。
涙はまだ、止まらない。
大好きだった。
大切だった。
ずっと一緒だと信じていた。
まるで問いかけるかのようにきみの名前を呼ぶ。
風にかき消されたそれは、まるで僕らのようだった。