いい友達ずっと友達、残酷すぎて笑える


桜が満開に咲き誇る春の日、私たちは出会ったね。



真新しい制服に身を包んで。



『千奈美っていうの。よろしくね。』



『私は夏夜だよ。好きに呼んでね!』



入学式に仲良くなって、クラスも一緒で、すぐに連絡先を交換したよね。



学校生活にも慣れてくると、あの先輩がかっこいいだとか、あの人に告白されたとか。



恋バナまで始まってた。



2人でたくさんお出かけしてさ。



本当に毎日が楽しくて仕方なかったんだ。



『私たち、ずっと友達だよ。』



『あたり前じゃん。』



漫画に出てきそうな2人だねって笑いあったこともあった。



『私、好きな人が出来たんだ。』



『…だれ?』



『3組の司君…。』



私の発言に驚きながらもニヤニヤとして笑ってた夏夜。



この時、多分夏夜の中で何かが変わってしまったんだろうな。



『私で良ければなんでも相談乗るよ!友達なんだから!』



そう言ってた夏夜。



『さっき司君、千奈美のこと見てなかった!?もしかして両想いなんじゃない!?』



そう言って喜ばせてくれた夏夜。



『大丈夫、千奈美可愛いもん。きっと司君も千奈美のこと気にしてるって!』



そう言って自信をもたせてくれた夏夜。



『ありがとう、夏夜。』



私は…、何も疑ってなんかいなかった。



だから夏夜との関係を《いい友達》ってずっと思ってた。



『あのね、千奈美。…私、司君と付き合うことになったの。』



『……え?』



驚きを隠せず固まってしまった私には夏夜は続けて言う。



『千奈美の恋を応援したくてさ。司君のこと調べたりしてたの。それでね、思い切って本人にあれこれ聞いてたら私まで好きになっちゃってさ。』



『ねぇ、何言ってんの?』



『そしたらさ、昨日告白されちゃってさ。私も好きだし問題ないじゃない?だからオッケーしちゃったの。』



『ねぇ!』



『だから千奈美、さっさと司君のこと諦めてね?じゃないと友達やめちゃうから。』



ケタケタと笑いながら、悪びれる様子も、それどころか何が悪いかもわかっていないかのように夏夜は言った。



私は何も言えなくて。



何も言うことなんてできなくて。



夏夜から走って逃げるしかできなかった。



『なにがいい友達、なにがずっと友達…。』



走りながら、楽しかった思い出を思い浮かべる。



少し前まであんなにも楽しかったのに。



『はぁはぁ…。』



校舎の屋上まで必死に走ってきた。



呼吸を落ちつかせるためにゆっくりと息をする。



『…あははっ。』



なにが友達。



こんなの、あまりにも残酷じゃないか。



『私、あんなにもバカにされてさ…。ホント笑える…。』



フェンスにもたれ掛かると、頬に涙が伝う。



『夏夜、友情ってこんなにももろいモノなんだね。』



胸ポケットからスマホを取り出すと、カタカタと操作していく。



笑顔で写った写真。



何時間も話し続けた通話履歴。



くだらない内容でも続けて話したメッセージ。



『…削除。…削除。…削除。』



思い出はもう、憎しみしかない。



『大嫌い。』



友情の終わり方を知った16の秋。



仕返しを決意した16の秋。



『覚えてろ、夏夜…。』



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