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『おう。家出少年。』
豪快に笑いながら漫画片手に秀哉は言う。
家出じゃない!と返しながら椅子に座り大きく溜め息をつく俺は、きっと情けない顔をしていただろう。
しかしそれもつかの間。
そうだ!っとすぐについさっきの出来事を話した。
『ってことですごく怖い思いをしたわけだよ。』
『ふーん…。』
もっと笑うなり驚くなりすると思っていたから、こんなにもあっけらかんとした返事に、拍子抜けしてしまった。
『そいつの顔は見た?』
『そんな余裕ないよ。こっちは必死で走って逃げたんだから。』
するとまた秀哉はふーんとそっけない返事をして、また読んでいた漫画に視線を戻してしまった。
興味があるんだかないんだか。
『ちなみにさ、この近くの公園のそばじゃなかったか?』