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雨の日の出来事から数日が経ち、空とはなぜか毎日連絡をとりあっている。
といっても
《透:今日聴きに行くよ。》《空:うん、ありがとう。》
《透:今日は歌いに行かないからね。》《空:了解》
という程度ではあるけれど…。
歌は大体2日に1回くらいのペースで聴きに行っていて、行ったら歌を聴いて、途中まで一緒に帰るだけ。
特にこれといった進歩はない。
そんな感じが2週間ほど続いた。
『今日も暑いなぁ…。』
そう小さく言いながら袖で流れる汗を軽く拭く。
『毎日毎日嫌になるよな。』
後ろに立つ海斗は、隠し持っていたのであろう団扇を使っている。
『お前、それずるい。』
ニヤッと笑う海斗を横目に見ながら、視線を前へを戻した。
今日は待ちに待った終業式。
明日から夏休みに入る。
宿題という恐ろしいものがあるけれど、今は忘れておこう。
『夏休みどっか行くの?』
先生の視線もあるため海斗からの問いかけに前を向いたまま答える。
『特にこれといった予定はないな。暑いし。』
『ふーん…。彼女とデートとかしないのか?』
『彼女は現在募集中だ。』
『え、毎日彼女と公園デートしてるんじゃなかったっけ?』
いつの間にそんな事になっているのかと驚きはしたけれど、今はその衝動を抑え、平静を装い返事をする。
『違う違う。公園には歌を聴きに行ってるだけでデートじゃない。細かく言えば毎日じゃない。あとその人は彼女じゃなくて幼馴染の友達だ。』
きっと今、海斗はおもしろいくらいに残念そうな表情をしているんだろう。
見れないのが少し残念だ。