15
『私は歌が大好きでいつもここで歌ってるの。ねぇ、どうしたらいいの?どうしたら思いの届く歌を歌えるの?私わからない。わからないよ。いつか私にもわかるかな?できるかな?』
天使は自身の思いを言っているのだろう。
でもこれはきっと俺に対してじゃない。
確かに俺は目の前にいるけど、でも彼女の瞳は俺じゃない何かを見つめているから。
『できるよ…。』
大粒の涙を浮かべながら、天使はその瞳をこちらに向ける。
『俺にもわかんないけど…。確かなことは言えないけど…。』
俺は何をしているんだろう。
『きっとできるよ。できるはずだよ。俺…、こんな歌聞いたことない。こんな吸い寄せられるような、気持ちを持ってかれるような歌、聞いたことない。』
つられ泣きってやつかな。
『ホントに?ホントに私にできるかな?歌えるかな?』
男泣きなんて情けないよな。
『できるよ、きっとできる!』
空は今、雲ひとつなく晴れ渡り綺麗な星空を見せている。
でもきっと「そら」の心は雨雲で、青空なんて一ミリも見えないのだろう。
でも俺が本当の空を見せてあげられるなら。
濡れてしまったその羽根で、また綺麗な青空のもとで羽ばたくことができるなら。
『ありがとう。ありがとう…。』
雨はきっとあがるから…。
空はきっと晴れるから…。