先日の映画観賞会の次はカレー会に呼ばれた。カレー会とは何ぞや。よくわからないが、諏訪さんの部屋にお邪魔している。

「諏訪さんのお部屋初めてです…」
「まあそうだろうな、呼ぶの初めてだからな」
「結構シンプルなんですね、私もっと、うるさい感じなのかと」
「部屋がうるさいってなんだよ、お前俺に遠慮なくなってきてるな?」

見た目ヤンキーな諏訪さんのことだから、部屋の中もそんな感じなのかなと思っていたのだが、全くの偏見だったようだ。私の部屋より物が少なくて広く感じるし、片付いているしシンプルだ。煙草を吸うということも聞いていたのに煙草の匂いもしない。

「相当な頻度で俺の部屋にたまる奴らがいるからな。モノが多いとくつろげねえし」
「なるほど。…というか、カレー会って二人なんですか?」
「ちっげーよ!!木崎と風間が今買い出し行ってんだよ!」

さすがに二人っきりってこたねえよ!!と気合の入ったツッコミをする諏訪さんだった。よかった、別に諏訪さんと二人きりだからって嫌なわけではないのだが、諏訪さんから料理を始めようという気も感じられなかったし、カレー会って本当に何?という気持ちだった。ちゃんとカレー会するらしい。

「なんでカレー会なんですか?」
「風間の好物が木崎手作りのカツカレーなんだよ」
「…そ、そうなんですか…」
「…まあ、とにかく、木崎のカレーはうまいからタダ飯だし食っとけ」
「ありがとうございます!」

風間さんの好物がカレーだったらなぜ私を呼んでカレー会することになるのかわからないが、とにかく、食べさせてくれるのなら喜んでごちそうになる。
木崎さんって見た目、お料理するようには見えないのが本音だが、やはり人は見た目によらないんだなあと思っていると、ピンポーンとチャイムの音が聞こえた。噂をすればなんとやらである。諏訪さんが立ち上がって玄関に行く。

「おう、おせーよ…って、なんでてめーまでいんだよ生駒!」

知らない人の名前が出てきたので驚いた。カレー会参加者が増えたようだ。重たそうなマイバッグを二つも下げた木崎さんと、その後ろからやってきた風間さんと、知らない人が入ってきた。

「苗字すまん、遅くなった。そして一人増えた」
「どうも初めましてやな、スーパーでばったり会って、カレーがタダで食えると聞いてやってきた生駒達人いうモンです、イコさんでええで〜」

これまたキャラの濃ゆい人がやってきたものだ。関西弁を話す人は二人目だ。隠岐くんも関西弁を話していたはず。聞きなれない関西弁を初対面で聞いたときは、少し感動したものだった。私も名乗ろうとすると遮られた。

「話は聞いとるで。諏訪さんのお隣さんやろ。隊員寮に入ってきた一般ピーポーの」
「はい、そうですけど…」
「俺も19歳、同い年や。敬語いらんで、仲良うしよや!」
「そうなの!ええ、年上かと思った…」
「えっそれ地味に傷つくんやけど」

俺そんなに老けて見える?と独特のイントネーションで言われて、慌てて否定した。迅さんしか同い年の人に出会ってなかったので地味に嬉しい。

「よろしくね、イコさん!」
「ん!こんなカワイイ子と知り合えて嬉しいわ、あ、連絡先交換してくれへん?」

すかさずスマホを取り出したイコさんに風間さんがチョップを入れる。人参を持つ風間さんちょっとかわいい。

「オイ生駒、食いに来たなら手伝え。働かざるもの食うべからずだ」
「へーい、すんませーん」
「あ!すいません、木崎さん、風間さん。私も…」
「苗字はいいんだ、客だからな」

こっちに座ってろーと完全に待機の恰好の諏訪さんに言われ、お言葉に甘えて座った。木崎さんの包丁の音がすごく早くて主婦感がすごい。

「いきなりわりーな、生駒もカレー好きらしいってのは聞いてたがまさか来るとは」
「カレーはカレーでもナスカレー推しやで!!」
「聞いてねえよ!」
「カレーおいしいですよね、私カレーなら何でも好きですよ」
「そりゃよかったわ。まあカレーはな、うめえよな」
「木崎のカレーが一番うまい。いつも諏訪が世話になってるからな、同期としては日ごろの礼をこめてご馳走したかったわけだ」

人参とジャガイモの皮をむき終え、俺の仕事は終わったとばかりにこっちへ来て座る風間さんがそう言った。そういう意図だったのか。こちらこそお世話になっているのに、なんだか悪いなあ、と思っていると、いいことを思いついた。

「あ、私、作り置きのきんぴらごぼうがあるので持ってきましょうか!」
「ぶっ、お前、きんぴらごぼうって…主婦か!」
「苗字、諏訪の分まで俺が食う。お前がいいならぜひ持ってきてほしい」
「いや待て、食わねえとは言ってねえだろ、きんぴらごぼういいよなきんぴらごぼう」
「自炊練習中なんですよ…!とにかく持ってきますね!」

バカにしたような諏訪さんだったが真顔の風間さんの一言に、慌てて取り繕う様子が面白くてクスクス笑いながら部屋に戻った。タッパーに入った作り置きのきんぴらごぼうをタッパーごと持っていく。木崎さんに差し出すと、ふっと微笑んで受け取ってくれた。
カレーを煮込んでいる間、話題は私が相談したサークルの話になった。サークルで迷っているというと、イコさんがギターをやっていると自慢げに話した。ギターかあ、楽器やってみたいなあ。でも確かここの寮、楽器はダメだったような。それに隣の菊地原くんからクレームが来ること間違いなしだ。やめよう。

「できたぞ」
「わ〜〜いい匂いですね!カレーだ!」
「だからカレーだっつってんだろうが、やっぱウケるな苗字」
「名前ちゃんナスカレーとカツカレーとどっち派なん?」
「カツカレーに決まってるだろう。いいな苗字」
「諏訪、きんぴらごぼう取りに来い。あと茶」
「ハイハイわーったよ」
「私も手伝います!」

にぎわう食卓、これでこそカレー会という感じだ。楽しくなってきた。定期的に呼んでほしいと思う私なのだった。







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