Oh, bother!2

麦わらの一味と隻眼の女





空島バカンス


雲が帯状になり、まるで川のよう。その雲の川をものすごい勢いで登って行く船。しばらくメインマストにしがみついていたが、安定してきたので体を離す。川の終点が見え始めると、看板が見えた。”神の国スカイピア”と、書いてあったのだ。


「島だ…!!”空島”だ〜〜〜!!!」


川から出ると、雲の海の向こう側に、確かに島が存在していた。




船から降りるなり、ルフィさん達が空島だと叫びながら走り出した。それを甲板から見下ろして、辺りを見渡してほうと息を吐く。真っ白な雲の海、その向こうには砂浜。ヤシの木のような植物もあるし、花もある、完全にビーチだ。完全ににわかには信じがたい光景だ。


「夢じゃないですよね、これ」
「頬でもつねってやろうか」
「てめェマリモ野郎、ユナちゃんにんなことして見ろオロすぞ!!」
「うるせェなやってねェだろ!!」


空に、島があるなんて。雲のビーチだなんて。全てが夢みたいだ。目をごしごしとこすってみるが、やはり風景は変わらない。その隣でゾロさんとサンジさんが言い合いをしている。こんなところに来てまで懲りないものだ。早くも慣れてきた。


「にしても、この風景にゃたまげたな…」
「それに、あいつらのハシャギようときたら…はは!しょうがねェな。ひゃっほ〜〜〜う!」
「おめェもだよ」


言いながらジャンプして降り立ったサンジさんに、ゾロさんが冷静にツッコミを入れた。下からサンジさんが私に手を振る。


「ユナちゅわ〜〜ん!おいでよ、一緒にあいつらのところに行こう!」
「今行きます!」
「ちょっと待った」


私も飛び降りようとしたとき、肩を掴まれて振り向くと、そこには着替えたナミさんがいた。後ろにはロビンさんも。こちらも着替えを済ませている。どちらもビーチスタイルのファッションに変わっていて、すごくかわいい。なによりお二人ともスタイルがよすぎる。眩しい…


「ユナ、アンタずっとその服でいるわけ?着替えかしたげる。海兵のロゴ入ってると私たちもやりにくいから、着替えてきなさい!」


な、なんですと。着替えの指令でしたか。私は慌てて首を振った。


「私はこのままでいいです。ナミさんの洋服は私にはハードすぎます」
「ハード?何がよ」
「私あんまり露出が激しいのは慣れていないので」
「つべこべ言わない!マシなの貸してあげるから!」
「い、イヤですー!!」


結局、服を借りることになったのだが、どれもほとんど同じような露出度のものだったので、諦めてチョイスをお任せした。あれこれ着せ替えられた結果、裾を結んだ鮮やかなデニムシャツに、ショートパンツ。もう何も言うまい。にあっているかはさておき、かわいいし気に入った。ロビンさんも似合ってるわと言ってくれる。まあたまにはいいか。きっとすぐに慣れるはずだ。
部屋から出ると、甲板にいたゾロさんが私に視線を寄越す。じろりと眺められ、思わず後ずさる。


「…何か?」
「…着替えたのか」
「あ、はい。ナミさんから借りて」
「そっちの方がいい。海兵が船に乗ってるみてェで気持ち悪かったからな」


それだけ言うとフンとそっぽを向いてしまったが、少し安心した。これで、少しは馴染めるだろうか。ナミさんのおかげだ。


「ナミさん、ありがとうございます」
「どういたしまして。服レンタル、1000ベリーね」
「お金とるんですか!?」
「もちろんよ!って言いたいとこだけど、あんたお金持ってないしね。特別にチャラにしたげる!……その代わりに、」
「は、はい」


何が要求されるのだろうとびくびくしていると、ナミさんは一つ咳をしてから、こう言った。


「今度、ショッピングに付き合いなさい!」
「ショッピングですか?」
「ええ。断ったら利子10倍」
「断るわけありませんよ!もちろんです。楽しそうですね!」
「…そ!もちろんロビンもよ?」
「私も?…ふふ、嬉しいわ」


にっこり笑って答えると、ぱっと弾かれたように笑うナミさん。もしかして、もしかしてだけれど。年の近い友達が出来て、実は嬉しいのではないだろうか。女のクルーはロビンさんだけのようだし。なんて、都合のいいように考えてしまう。そうだといいな。
それでは、気を取り直して出陣だ。


「行きましょうよ、ナミさん、ロビンさん!」
「ええ、行きましょ!」
「ふふ」


ザブン、と降り立ったビーチは、海のようで海ではなく、フカフカで最高の気持ちよさだ。思わずジャンプしたりして、目があったゾロさんに手を振る。


「ゾロさんもいかがですかー!?せっかくですから、楽しまなくちゃ!たぶん、二度とないですよ、空島なんて!」
「分かった分かった、さっさと行け、俺も後で行く」
「はい!」


すぐに降りてきたナミさんと並んで、ルフィさん達のいる波打ち際まで走っていく。景色も良ければ天気もいいし、最高だ。それぞれビーチを楽しんでいた。


「う〜…ん、ここなら海軍も追って来ないし羽を伸ばせる!ビーチなんて久しぶりっ!」
「素敵なビーチですね!わあ、椅子まで用意されてます!」


屋根のあるところにはイスがあり、座ってみるとまふっとした新感覚がまた心地いい。なんとイスまで雲でできているようだ。


「ナミさん、このイス雲でできてますよ!座ってみてください!」
「本当だ!やっぱり雲で造形する技術もあるのかしら」


ナミさんも座ってその座り心地を確かめる。そこにチョッパーさんも来て、イスにダイブした。


「うお、でもフカフカ雲とは別だな!まふっとしてるぞ」
「ですよね、まふっと!これ欲しいです、私」
「さすがにイスを持っては帰れないわよ」
「そうですよねー、残念」


立ったり座ったりを繰り返して楽しんでいると、サンジさんが嬉しそうに走ってきた。その手にはハイビスカスに似た花が数本握られていて、とてもかわいらしい。


「ナミすわーん、ユナちゅわーん!お花〜〜〜!」
「わ、きれいですね!ナミさん、見てください、お花!これなら持って帰れますね、花瓶に生けましょう!」
「ユナってばはしゃぎすぎ」
「だって楽しいんですもん!」


はしゃぎすぎ、と言うナミさんもさっきからイスに座ってご満悦だし、なんだかんだはしゃいでいる。そんなとき、どこからともなくポロロロンと透き通った楽器の音が聞こえてきた。イスから立ち上がり、音の聞こえる方を振り向くと、背中に羽の生えた若い女の人がハープのような楽器を弾いていた。振り向いた彼女は、私たちを見ると小さく頭を下げて微笑んだ。


「へそ!」
「「へそ?」」


よくわからない単語を言ってから、近づいてくる。おおよそ、挨拶のようなものだろうか。変わった挨拶だなあ。


「青海からいらしたんですね。ここはスカイピアのエンジェルビーチ。私はコニス、何かお困りでしたら力にならせてください」


かわいらしい空島の住人コニスさんは、しっぽの大きなキツネを抱き上げてそう言った。
ここで空島の住人に出会えたのは幸運だ。いろいろ教えてもらえそうだ。
こんな、文字通り天国のバカンスにせっかく来たのだから。空島を満喫してから海軍に戻るのも悪くないかもなあ、なんて思ってしまうのも仕方が無いと思う。



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