Oh, bother!2

麦わらの一味と隻眼の女





人取り合戦


トンジットさんは、家の外にいた白馬と次の引き潮のときに移住するそうだ。泣かせる話だ、白馬は10年間もの間トンジットさんの帰りを待ち続けていたのだ。しかし個人的には結局次の島まで下船を延期にしたことも泣ける話である。みんなと過ごせるのは嬉しいが、あそこまで堂々と、降りる降りると散々言っておいて撤回なんて恥ずかしくて泣ける。

トンジットさんは白馬シェリーと感動の再会を果たし、乗馬を楽しんでいる。それを微笑ましく眺める私たちだ。


「は〜…!」
「まだいじけてんのかよ、ユナ!」
「いじけてませんから!シェリーの優雅さに見惚れてたんです!!」
「まあ確かに優雅な走り方だよな」
「しっかし速ェぞあの馬!おれも乗りて〜!」


そのときだった。パァン、と音がして、喜びを表すかのように走っていたシェリーが崩れ落ちたのは。


「え!?」
「何だ!?」


慌てて駆け寄ると、シェリーから落ちたトンジットさんは体を打っただけで無事だが、シェリーが痛そうに鳴き声をあげている。さっきのは銃声だった。誰かに撃たれたのだ。
一体誰がこんなことを。


「チョッパーさん!!手当を!!」
「ああ!!」


慌てて駆け寄り、介抱する。シェリーは足を撃たれたが、骨に異常はないようで大事には至っていない。よかった、とホッとするが、それより犯人は誰なのか。 声が聞こえて振り向くと、ルフィさんが犯人らしき三人組と対面していた。ユーモア溢れる格好をしていて、見たところ海賊のようだ。私たちの他にもこの島に海賊が上陸していたとは。ルフィさんがシェリーを撃ったことで激昂しており、なにやら会話をしている。おもしろおかしい髪型のボスらしき人が、三枚のコインを見せつけた。


「我々フォクシー海賊団!!麦わらの一味に対し!デービーバックファイトを申し入れる!!」
「何をゴチャゴチャ言ってんだ!!さっさとかかって来い!!勝負なら受けてやる!!」
「デービーバックファイト…?」
「ルフィ、そのゲーム!!…ダメだ!!仲間を失うぞ!!」


聞きつけたウソップさんが血相を変えた。ルフィさんを止めに入ったウソップさんに続き、手当をチョッパーさんに任せて立ち上がる。


「なんだよウソップ!」
「そのゲームの申し入れを受けるなっつったんだ、ルフィ!!」
「フェッフェッフェ!!バカ者ォ!確かに聞いたぞ、麦わらのルフィ!勝負を受けると確かに言った!!それとも何か?男に二言があるのかい」
「ねェ〜〜っ!!」
「だから乗せられんなって!!」


挑発するようにそう言うと、ルフィさんはいとも容易くその挑発に乗った。ルフィさんはシェリーを撃ったことを許せないのだ。私だって同じ気持ちだ。10年間越しの再会を邪魔したこいつらに、報いを。しかしここまでウソップさんが止めようとするくらいだ、ゲームの内容が気になるところ。


「どんなゲームなんです?」
「エゲツないゲームだ…海賊が海賊を奪い合う、”人取り合戦”だ!」


そう聞くと、聞いたことがある。確か、海軍本部で読んだ本に書いてあった気がする。デービーバックファイト、その海賊のゲームによって、事実上滅んだ海賊団は数多く存在する。そう読んだ記憶がある。恐ろしいゲームだ。しかし、それは負けた際の話であり。


「…負けなければいい話では?」
「バカ、ユナ!変なこと言うな、ルフィが調子にのる!!」
「そうだぞ、負けなきゃいいだろ!」
「それでもリスクがでけェって言ってんだ!!」


必死に止めようとするウソップさんだが、ルフィさんを説得することがどれだけ難しいことか、私は空島で思い知っているのだ。第一、相手はルフィさんを逃しはしないだろう。
そのとき、トンジットさんが叫んだ。


「どいてろ、おめェら!!あいつらシェリーと同じ目に合わせてやる!!」
「待て、おっさん!!」


いきなり銃を手に、海賊を撃とうとする。私はほとんど反射的に飛び出した。


「待って!!」


手を広げ、立ちはだかる。トンジットさんは退けと叫ぶが、首を振る。


「相手は海賊です!むやみに攻撃を仕掛けてはいけません!」
「だが、シェリーが!!」
「あんな人たちのために、トンジットさんが手を汚す必要ありません。その役目はこちらに任せてください!」
「お、おいユナ!?何言ってんだ!?」


あ。言っちゃった。勢いで。言いきった直後に後悔しかけたが、振り向いたときにルフィさんがにっと不敵に笑っているのを見て、仕方ないと覚悟を決めたのだった。


「ユナ〜〜!?お前何言ってんだァァ!!」
「すいませんウソップさんその場の勢いで!!」
「アホーッ!!」


ウソップさんから肩を揺らされる。ルフィさんは私の肩を叩き、スタスタと歩いた。


「よく言った、ユナ!そうだぞ、おっさん!おれたちに任せろ!!」


ルフィさんがトンジットさんから銃を奪い取り、そして空に向かって引き金を引いた。ゲームを受諾したという合図を。
ドン、ドォン!


「フェッフェッフェ〜〜ッ!!」
「アホーっ!!アホーッ!!」


ウソップさんは涙まじりにルフィさんの頬を叩く。嘆くウソップさんに苦笑していると、海賊から視線を感じて顔を上げる。


「…んん〜?そういえばお前の顔、見覚えがあるなァ……?」


じろじろと見られ、不愉快だ。私はあからさまに嫌そうな顔をして言い返した。


「はい?初対面ですよ、こんな奇抜すぎる頭の知り合い居ませんし」
「奇抜すぎる頭………」
「ほっ褒め言葉ですよオヤビン!!」


肩を落としてしまった海賊を連れが励ます様を見ていると申し訳なくなったが、謝らない。これくらいばちは当たらないはずだ。
ウソップさんは未だ嘆いているが、多分問題ないと思う。ルフィさんがこんな奴らに負ける姿なんて想像できないのだ。きっと簡単に返り討ちにしてやってくれる。なんて軽く考えた私は、このゲームの恐ろしさをまだ理解していなかったのだ。そして、この海賊フォクシーの真の力も。



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